抄録
慢性的なアルコール摂取による低カリウム血症や低カルシウム血症は頻回に認められるが, 補正中の合併症については知られていない. 症例は55歳の男性で, 体動困難のため近医に搬送された.血清カリウム1.7mEq/L, 補正血清カルシウム7.1mg/dL, さらにクレアチニン4.7mg/dLであり, 重症の低カリウム血症と腎機能の低下を認め当院へ転院搬送となった. 長期にわたり毎日アルコールを摂取しておりアルコール関連の電解質異常が疑われた. 入院15時間後に血清カリウムは2.5mEq/Lと補正される一方で, 来院時QTc 451msecが852msecとさらにQT時間の延長を来たし, 心室細動となった. 蘇生により自己心拍は再開したがその後Takotsubo cardiomyopathyを発症した. 一時低血圧となったが以後バイタルは安定した. 第8病日にQTcは正常化し, 第25病日に転院した. 慢性的なアルコール摂取者では, カリウム補正を開始し血清カリウム値が上昇し始めてもQT時間のさらなる延長の可能性があり心電図モニタリングを継続する必要がある.