2022 年 83 巻 1 号 p. 147-151
症例は76歳,男性.当科でStage III C胃癌術後の経過観察中に十二指腸乳頭部癌を指摘され,これに対し膵頭十二指腸切除術(PD)+D2リンパ節郭清を実施した.前回手術による腹腔内の高度癒着を認めるも順調に進行し,閉腹前に右腹部より2本のドレーンを膵周囲に留置し,手術時間5時間17分で終了となった.PD関連の一般的な合併症は起きなかったが,術後4日目の夕方より急な右下腹部痛が出現した.体表から腹壁異常は認めず,バイタル,ドレーン排液に変化がないため一晩経過をみた.翌朝の採血で高度貧血,血圧低下を認め,造影CTを実施された.右下腹壁動脈損傷と腹壁血腫を認め,interventional radiology(IVR)治療を行い止血を得た.術後20日目に自宅退院となった.ドレーン刺入部は下腹壁動脈の位置とは離れており挿入操作が誘因とは考えられず,術野展開時の開創鈎による腹壁の牽引で下腹壁動脈の損傷が起きたものと考えられた.自験例のような報告は非常に少なく,考察を加え報告する.