2022 年 83 巻 5 号 p. 844-848
症例は69歳の女性.上行大動脈置換の既往がある.今回,下行大動脈瘤に生じた下縦隔の大動脈食道瘻に対し,胸腹部大動脈置換に加え,食道切除二期再建を実施した.第一期手術では右半側臥位・左開胸開腹による胸腹部大動脈置換,食道亜全摘,大網充填,頸部食道瘻造設,胃瘻造設を施行した.大網皮弁作成においては,後日の胃管再建のために右胃大網動静脈を胃側に温存し,左胃大網動静脈をpedicleとする大網皮弁を食道裂孔経由で胸腔内に挙上した.第二期手術では大網皮弁のPedicleである左胃大網動静脈を損傷しないよう,同動静脈を胃壁に沿って処理したうえ胃管を受動し,胸壁前経路で挙上再建した.術後は縫合不全を合併し経過がやや遷延したが,重篤化することなく自宅退院が可能であった.左胃大網動静脈をpedicleとする大網皮弁作成は,後縦隔への大網充填と二期的な胃管による食道再建を両立させる有用な方法であると考えられた.