日本臨床外科学会雑誌
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症例
タモキシフェンにより急性膵炎を発症した乳癌の1例
安東 美の里久田 知可近藤 直人鰐渕-遠藤 友美遠山 竜也
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2022 年 83 巻 8 号 p. 1398-1402

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抄録

症例は52歳の女性.既往歴に高脂血症を有していた.45歳時に左乳癌に対して,左乳房部分切除術,腋窩リンパ節郭清を施行し,術後薬物療法としてタモキシフェン(TAM 20mg/日)を内服していた.術後7年3カ月(TAM内服開始より6年7カ月)経過した時点で,腹痛・嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.血液検査で,炎症反応上昇とトリグリセリド(TG)2,670mg/dLと著明な上昇を認めた.CTで膵腫大,膵周囲の脂肪織濃度上昇を認め,高TG血症に伴う急性膵炎の診断で入院となった.後方視的に確認すると,TAM開始後より,血清TGは上昇傾向であった.膵炎発症を契機にTAMは中止し,血清TGはTAM開始前と同等にまで改善した.過去の報告によると,TAMによる急性膵炎は内服開始から1年以内に起こることが多いが,本症例のように内服開始から長期経過していても発症することがあり,注意が必要である.

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