2022 年 83 巻 8 号 p. 1464-1469
症例は93歳,男性.心筋梗塞の既往があり,2剤の抗血栓薬を内服していた.腹痛を主訴に前医を受診し,急性腹症の疑いにて,当院へ紹介となった.腹部単純CTでは,腹腔内の広範囲に血性腹水を疑う液貯留を認め,さらに小腸を穿通する線状高吸収構造物と,腸間膜内遊離ガスを疑う所見を認めた.魚骨による小腸穿孔,急性腹膜炎,腹腔内出血と診断し,緊急手術を行った.開腹所見は,多量の血性腹水と凝血塊を認めた.凝血塊を除去し,腹腔内洗浄後に腹腔内を検索すると,小腸壁外に刺通する魚骨を確認し,同部位からの持続出血を認めた.穿孔部を含む約10cmの小腸部分切除術を施行した.術後吻合部出血をきたしたが,保存的加療により軽快し,術後36日目に退院となった.魚骨による消化管穿孔の報告はしばしばみられるが,腹腔内に多量の出血を伴う症例は稀である.2011年から2020年までの,自験例を含む魚骨消化管穿孔176例の文献的考察を加え報告する.