2022 年 83 巻 8 号 p. 1484-1490
腸管嚢胞性気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis:PCI)は消化管の粘膜下,漿膜下に多数の含気性嚢胞を生じる疾患である.腹腔内遊離ガスや門脈気腫を合併することもあるが,腹部症状や検査所見に乏しく,特異的な異常を認めない例も存在する.本症例では直腸脱で来院し,胸部X線を施行した際に偶発的に横隔膜下に腹腔内遊離ガスを認めた.腹部CTでは腹腔内遊離ガス,腸管気腫を認めたが炎症反応も乏しく,明らかな腹部症状を伴わなかった.保存的加療を行い,待機的に直腸脱に対して腹腔鏡下直腸脱根治術を行った.回腸の腸間膜側に多発する嚢胞を認め,一部切除し組織学的にも腸管嚢胞性気腫症と診断した.直腸脱による腸管内圧の上昇で腸管ガスが腸管壁内,さらには壁を越えて腹腔内に侵入したことが考えられた.腹腔内遊離ガスは直腸脱根治術後に改善し,直腸脱による閉塞が原因であることを裏付けた.直腸脱による腸管嚢胞性気腫症の報告はなく,文献的考察を加え報告する.