日本臨床外科学会雑誌
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症例
特殊フィルターを用い待機的に切除したポルフィリン症併存急性虫垂炎の1例
高須 千絵吉川 幸造徳永 卓哉西 正暁柏原 秀也島田 光生
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キーワード: 光線過敏症, 虫垂炎, 手術
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2022 年 83 巻 8 号 p. 1491-1495

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抄録

ポルフィリン症はヘム合成酵素の遺伝子異常で引き起こされる疾患である.光線過敏症を伴い光毒性による内臓損傷へのリスクが高い赤芽球増殖性(骨髄性)ポルフィリン症患者(erythropoietic protoporphyria:EPP)に,特殊フィルターを用いて光毒性の対策を行うことで,虫垂切除術を安全に施行可能であったので報告する.症例は21歳の女性で,幼児期にEPPと診断され経過観察中であった.上腹部痛にて当院内科を受診し,急性虫垂炎と診断.保存的に加療を行い,後日手術目的に再入院した.本症例は光線過敏症を伴うポルフィリン症であり,術前に照明の波長測定を行った上光線過敏症の原因となる波長光を避けるため,無影灯に特殊フィルターを取り付けて手術を行った.開腹にて虫垂切除術を施行し,術後にポルフィリン症状の悪化やポルフィリンの急性発作はなく,第3病日に退院した.

今回われわれは,非常に珍しい光線過敏症を伴うポルフィリン症患者に対して開腹虫垂切除術を経験した.特殊フィルターを用いた照明対策を行うことにより,安全に手術を施行可能であったので報告する.

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