日本臨床外科学会雑誌
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症例
食道癌後縦隔再建術後1年目に発症した食道裂孔部嵌頓ヘルニアの1例
中川 将視森 直樹日野 東洋最所 公平藤崎 正寛藤田 文彦
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2023 年 84 巻 10 号 p. 1587-1592

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抄録

症例は74歳,男性.2019年9月に胸部中部食道癌に対し右開胸開腹食道亜全摘,3領域リンパ節郭清,後縦隔胃管再建術を施行した.術後1年目に急性腹症で近医に搬送され,CTで右胸腔内への小腸脱出を認め,食道裂孔ヘルニアの診断で当院へ紹介となった.受診時には腹部症状は消失し,保存的加療を行うも,入院後12日目に腹痛が再燃した.CTで食道裂孔ヘルニア嵌頓を疑い,緊急手術を施行した.右胸腔に脱出した小腸は壊死の所見は認めなかった.小腸を還納し,裂孔閉鎖を行った.術後に創哆開を発症し再縫合を行ったが,その後の経過は良好で軽快退院となった.本症例の発症誘因は,右胸腔内に胃管が脱出したことによる裂孔の間隙に腸管が迷入したことが考えられた.術後の食道裂孔部のヘルニアは自然寛解する可能性は低く,手術による整復と裂孔縫縮が必要であると考える.

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