日本臨床外科学会雑誌
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症例
術後4年間無再発経過中の胃癌卵巣転移の1例
小林 照忠佐藤 龍一郎金子 直征佐藤 純
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キーワード: 胃癌, 卵巣転移, Krukenberg腫瘍
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2023 年 84 巻 10 号 p. 1611-1617

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抄録

症例は34歳,女性.心窩部痛を主訴に受診して3型胃癌と診断され,術前検査で両側卵巣に嚢胞性病変を認め,良性腫瘍と診断した.審査腹腔鏡で腹膜転移なく,右卵巣病変を腹腔鏡下に核出後,開腹して幽門側胃切除術を行った.病理組織検査ではpor,T4a,Ly1a,V1a,N0,Stage II Bで,右卵巣病変は成熟型嚢胞性奇形腫であった.術後補助化学療法終了後に右卵巣が腫大して胃癌転移または奇形腫悪性転化と考え,胃切除から14カ月後に両側付属器切除術を行った.病理組織検査で胃癌卵巣転移,いわゆるKrukenberg腫瘍と診断された.胃切除後5年,卵巣切除後4年間再再発なく生存中である.リンパ節転移や腹膜転移を伴わない胃癌でも卵巣へ転移する可能性があり,卵巣腫大を認めた場合は転移を念頭に置いて切除を検討すべきと考える.また,元々卵巣病変を有する胃癌の経過観察中には,卵巣病変の評価にMRIが有用な可能性がある.

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