日本臨床外科学会雑誌
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症例
膿瘍形成を伴った回盲部腸間膜デスモイド型線維腫症(径30cm)の1例
藤林 勢世田中 善宏佐藤 悠太浅井 竜一松橋 延壽
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キーワード: デスモイド腫瘍, 膿瘍, 感染
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2023 年 84 巻 10 号 p. 1638-1645

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抄録

症例は22歳の男性で,腹部膨満,腹痛を主訴に前医を受診した.造影CTでは腫瘍内出血・膿瘍形成を伴い急激な増大傾向を示す腸間膜由来の腹腔内巨大腫瘍を認め,当院へ紹介となった.CRPは著明に上昇し,凝固異常や高度栄養障害を伴い全身状態不良であった.精査の結果,腫瘍は回盲部腸間膜由来であると考えられ,回盲部合併切除で切除可能と判断し,準緊急での開腹手術を施行した.回盲部腸間膜に30cm大の腫瘍を認め,盲腸および虫垂への浸潤がみられた.予定通り回盲部切除術を施行し腫瘍を摘出した.病理組織学的所見からデスモイド型線維腫症と診断した.今回,われわれは腫瘍内膿瘍形成に伴う急速な増大傾向を示す巨大腸間膜デスモイド腫瘍の1切除例を経験した.巨大腸間膜デスモイド腫瘍は膿瘍形成を合併し全身状態不良となることがあり,外科的切除可能な時期を逸することなく,十分な画像評価の上,安全に手術を施行することが重要である.

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