2023 年 84 巻 12 号 p. 1940-1944
症例は44歳の女性で,右鼠径部の膨隆と疼痛を主訴に前医を受診した.鼠径ヘルニア嵌頓の疑いで当院に紹介となった.右鼠径部に5×3cm大の膨隆を認め,用手還納不可能であった.造影CTで右付属器に10cm大の嚢胞性腫瘤を認め,病変の一部が右鼠径部に脱出していた.腹部所見に乏しくヘルニア内容物の虚血の可能性が低い上に,併存の特発性血小板減少性紫斑病による血小板数も26×103/μLであったため,緊急手術を回避した.入院後に免疫グロブリンを5日間投与した後,準緊急手術の方針とした.入院後6日目に腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(TAPP)+右付属器摘出術を施行した.卵巣腫瘤を損傷しないよう癒着を剥離して,腫瘤を腹腔内に戻し,ヘルニア修復を行った.摘出した右卵巣腫瘤は嚢胞性腫瘤で,病理学的には子宮内膜症性嚢胞であった.子宮内膜症性卵巣腫瘤をヘルニア内容物とした極めて稀な鼠径ヘルニア嵌頓症例を経験したため,文献的考察を含め報告する.