2023 年 84 巻 4 号 p. 528-531
症例は64歳,男性.左前胸部腫瘤を自覚し受診した.超音波検査で乳頭から5cm離れた11時方向に15mmの充実性腫瘤を認め,MRIでは不整形腫瘤と乳頭の間に造影効果のない線状構造を認めた.吸引組織診にて浸潤性乳管癌の診断を得た.手術は乳房切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.術後病理検査では乳頭から乳管様構造が続く先に腫瘍を認め,浸潤性乳管癌,pT1b(9mm),pN0(sn),M0,Stage I,ER陽性,PgR陽性,HER2 1+,Ki-67 5%の結果であった.乳頭方向への腫瘍の乳管内進展は認めなかった.術後薬物療法はタモキシフェン5年間内服の方針とした.ほとんどの男性乳癌は乳頭直下に発生し,乳頭から離れた部位に発生した報告は少ない.本症例では,乳頭から乳管様構造が広がり男性乳癌が生じたことがMRIや病理検査で示された.男性でも乳頭から離れた部位に乳癌が発生することを認識し,乳管様構造の広がりを意識した診断や術式決定が重要と考えた.