2023 年 84 巻 8 号 p. 1238-1241
症例は72歳の女性.胃癌に対して腹腔鏡下胃全摘,胆囊摘出,脾臓摘出,Roux-en-Y再建を施行され,術後7カ月目に腹痛を主訴に当院を受診した.造影CTで左胸腔への腸管脱出と上腸間膜動脈の血流障害および腸管壁の一部造影不良を認め,絞扼性腸閉塞の診断で緊急手術を施行した.開腹すると食道裂孔部に横隔膜欠損を認め,大量の小腸が左胸腔内へ脱出し嵌頓していた.嵌頓を解除すると約60cmと過長な挙上空腸と横行結腸間膜の間隙(Petersen's defect)に,さらに小腸が嵌頓していた.同部位の壊死が疑われたため,小腸部分切除し再度Roux-en-Y再建を施行し,横隔膜欠損部は縫合閉鎖した.術後経過は良好であった.腹腔鏡下胃全摘後の横隔膜切開後食道裂孔ヘルニアとPetersenヘルニアの2つの内ヘルニアにより絞扼性腸閉塞をきたした稀な症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.