2024 年 85 巻 3 号 p. 365-370
乳腺腫瘍の組織学的分類には浸潤癌・非浸潤癌・Paget病のほかに,浸潤径1mm以下の微小浸潤癌が分類されている.微小浸潤癌は非浸潤癌に近い良好な予後が報告されているが,稀に遠隔転移をきたすことがある.本症例は,微小浸潤癌の根治手術後に孤立性肺転移をきたした.また,本症例はHER2陽性であったが,腫瘍径1cm以下のHER2陽性乳癌に対して化学療法とトラスツズマブを使用する十分な根拠はないため,本症例も化学療法を行わず経過観察としていた.術後1年後に孤立性肺病変を確認したため,少数転移の治療として病変を摘出した.病理結果は乳癌の肺転移であった.術後に化学療法を含む抗HER2療法を追加し,5年経過の時点で転移再発の兆候はない.文献上,微小浸潤乳癌の孤立性移転に対して少数転移として局所制御目的に摘出手術が施行された報告例は本症例以外には見当たらないため,この度文献的考察を加えて報告する.