日本臨床外科学会雑誌
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症例
鼠径部感染性リンパ節炎と鑑別を要した精索脂肪肉腫の1例
三本松 毬子宮地 洋介海道 利実成本 一隆鹿股 直樹
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2024 年 85 巻 4 号 p. 569-573

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抄録

45歳,男性.左鼠径部の違和感を主訴に前医を受診.造影CTで左鼠径リンパ節炎の疑いと診断され抗菌薬加療が開始されたが,症状改善に乏しく,当院を紹介受診.Toxoplasma症の疑いで内服加療継続となるも依然として症状が改善せず,悪性リンパ腫などとの鑑別診断のため,リンパ節生検目的で当科にコンサルトとなった.術前MRIにて既知の腫瘤は鼠径管由来の軟部腫瘍を疑う所見であり,一般外科・泌尿器科合同での手術を企画した.術中所見では,鼠径管前方に既知の腫瘤を確認し,鼠径管後壁・恥骨前面まで浸潤を認めたため,可及的な腫瘤切除および左高位精巣摘除術を施行した.術後病理組織診断は脱分化型脂肪肉腫であった.

脂肪肉腫は,軟部悪性腫瘍の約20%を占めるが,精索や陰囊内に発生することは比較的稀である.鼠径部腫瘤の病態としては鼠径ヘルニア・リンパ節炎などが一般的であるが,本疾患も鑑別疾患に含める必要があると考えられたため,文献的考察を含めて報告する.

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