2024 年 85 巻 8 号 p. 1141-1145
症例は70歳の男性で,右鼠径ヘルニアに対する手術目的で当院を受診し,腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(Trans-Abdominal Pre-Peritoneal repair:以下,TAPP)を施行した.腹腔鏡所見で両側に外鼠径ヘルニア(右:L2型,左:L1型)を認めたため,TAPPを施行し術後3日目に退院した.TAPP施行2カ月後に腸閉塞を発症し,当院に再入院した.イレウス管による保存的加療で改善を認めなかったため,手術を施行した.術中所見にて,右鼠径部の腹膜縫合部は離開し小腸が癒着していた.腹腔鏡下に癒着剥離術を施行した.前回の手術で留置したメッシュは周囲組織と強固に癒着し,腹膜の再修復が不可能であったため,癒着防止メッシュ(ベントラライST,バード社)で腹膜欠損部を被覆し手術を終了した.術後は合併症なく退院した.術後9カ月経過した現在でも腸閉塞,ヘルニアの再発なく経過している.
今回,TAPP施行後に発症した腸閉塞に対して,同部位を癒着防止メッシュで被覆し良好な経過であった1例を経験した.若干の文献学的考察を加えて報告する.