2025 年 86 巻 5 号 p. 589-593
症例は36歳,女性.第1子の授乳期間中に左乳房腫瘤を自覚し,助産師よりマッサージ指導を受けた.2年後に妊娠(のちに流産)した際に腫瘤増大を自覚し,その翌年の第2子妊娠時には腫瘤の更なる増大を自覚した.授乳を終えた後も左乳房の腫脹のみが改善せず,前医を受診した.左乳房を占拠する約10×10cm大の腫瘤を指摘された.針生検では線維腺腫の診断となったが葉状腫瘍も否定できず,加療目的に当科に紹介となった.画像上,正常乳腺が著明に圧排されており摘出後の乳房変形が危惧された.変形の可能性を了承の上で,乳房下溝に皮膚切開を置く左乳房腫瘤摘出術を施行した.乳房は概ね左右差のない形状に復帰し,整容性を保つことができた.最終診断は線維腺腫であった.3年以上の有病期間を推定する症例においても圧排された乳腺は概ね元の状態に復しており,良性腫瘍の腫瘤摘出術では,腫瘍が大きかったとしても術後の整容性をある程度期待できるものと考えられた.