2025 年 86 巻 5 号 p. 677-681
症例は37歳,女性.Marfan症候群に対する心臓血管外科での術後フォローのCTで右閉鎖孔からの虫垂の脱出を認め,右大腿部の疼痛も認めたため,当科を受診した.診察時には右大腿のHowship-Romberg徴候を認めた.血液検査所見では,僧帽弁置換術後でワーファリン内服中のため,PT-INRの上昇は認めたが,その他に特記事項は認めなかった.当科で改めて確認したCTでは,右閉鎖孔ヘルニアは認めたものの,虫垂など臓器の脱出は認めなかった.TAPPを施行.術後経過良好で,PT-INRが治療域になったことを確認のうえ,術後4日目に退院した.術後は右大腿のHowship-Romberg徴候の改善傾向も認めた.今回,若年女性には稀な疾患である閉鎖孔ヘルニアに対して,TAPPを施行した症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.