症例は38歳の男性で,健診の腹部超音波にて右側腹部に腫瘤を認め,前医にてMRIを施行したところ巨大右後腹膜腫瘍の診断となり,精査加療目的に当院に紹介となった.自覚症状は認めないものの,CTにて右後腹膜に34×22×21cmと巨大な囊胞性病変を認めた.囊胞壁に一部軽度肥厚を認め,囊胞内部頭腹側に5-8mm大の小結節を多数認めた.腹腔内臓器は左側に圧排されており,右腎尿路系の欠損を認めた.CTおよびMRIの所見から成熟囊胞性奇形腫疑いとなり,悪性化のリスクも考慮し手術の方針となった.開腹下に外科的完全切除を施行し,最終病理診断はdermoid cystであった.後腹膜dermoid cystは比較的稀な疾患であり,腎尿路系臓器の欠損を伴った報告は過去に認めず,非常に稀な病態であると考えられたために報告する.