2025 年 86 巻 6 号 p. 829-836
症例は60歳,男性.右鼠径部膨隆を主訴に受診した.ヘルニア囊内に虫垂先端が癒着したJHS分類L3のAmyand hernia(Losanoff分類Type1)に対して腹腔鏡下ヘルニア修復術(TAPP)を施行した.術後25日目に右鼠径部に強発赤および熱感腫脹を認め再診,CTで右鼠径部中心に隔壁を伴う液貯留を認めた.TAPP後腹膜前腔膿瘍と診断し,膿瘍ドレナージおよびメッシュ除去術を施行した.術後膿瘍腔のドレーンから腸液の流出を認め,CTではドレーン先端が盲腸内腔に迷入していた.膿瘍腔と腸管が瘻孔を形成していると診断し,回盲部切除術を施行した.膿瘍の培養で腸内細菌が検出され,再々手術所見で虫垂は同定されず回盲部が瘻孔部分と強固な癒着を形成しており,TAPPでの機械的刺激で虫垂や虫垂周囲に炎症を生じ,腹膜前腔と瘻孔を形成し膿瘍を生じたと考えられた.Amyand herniaのLosanoff分類Type1でも状況により虫垂切除術を先行し,二期的にヘルニア修復術を施行することも考慮すべきである.