人工知能
Online ISSN : 2435-8614
Print ISSN : 2188-2266
人工知能学会誌(1986~2013, Print ISSN:0912-8085)
複雑背景下で高速に運動する手指の形状推定に関する研究(パターン理解, <特集>「人工知能分野における博士論文」)
浜田 康志
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2006 年 21 巻 1 号 p. 117

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抄録

本論文では, 形状や姿勢が素早く変化する手指の形状を画像から推定する手法について論じた.まず複数台のカメラにより取得される画像を用いた指の重なりへの対処について論じた.手指形状推定では, 指と指や手の平が重なる場合に推定に有効な特徴の抽出に失敗することがある.そこで, 異なる視点から同時に撮影した多視点画像を用い, 各視点ごとにモデル画像との照合と特徴の現れている度合いの推定を行い, 多視点画像全体での照合度を求める手法を提案した.次に遷移ネットワークに基づくマッチング候補の限定について論じた.手指形状の種類は多く, すべての形状を入力画像と照合すると多大な計算時間がかかる.そこで学習段階で, 学習用時系列画像を用いてモデル画像とそれらの間の可能な遷移を自動登録し, 遷移ネットワークを作成した.推定段階では, 遷移ネットワークに基づいて遷移可能なモデル画像のみをマッチング候補とすることで, 効率の良い照合と急激な形状変化の追跡を可能とした.また肌色を含む複雑背景の手話動画像から手指形状を推定する手法について論じた.手指の素早い移動により輪郭が不明瞭となる問題に対し, 輪郭形状と位置と速度を特徴とするモデルと, 位置と速度のみを特徴とするモデルからなる遷移ネットワークを作成した.また複雑背景下での形状推定のために, 手指輪郭上および背景中のエッジ点存在確率に基づいて真の手指輪郭に対応する部分の長さを推定し, 評価基準とする手法を提案した.実験により形状の追跡と認識の性能が向上することを示した.

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© 2006 人工知能学会
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