全日本鍼灸学会雑誌
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原著
ラット脛骨骨折モデルの骨癒合能に及ぼす鍼通電刺激の効果
中島 美和井上 基浩糸井 恵
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2009 年 59 巻 5 号 p. 477-485

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抄録

【目的】鍼通電刺激の骨癒合能に対する影響を調査する目的で、 ラット脛骨の骨折モデルを用いて、 X線学的、 肉眼的、 および生体力学的に検討した。
【方法】Wistar系ラット (雄性、 12週齢) 30匹を用いて、 片側の脛骨骨幹部に開放的横骨折モデルを作成し、 無作為に鍼通電刺激群 (EA群)、 鍼群 (Sham群)、 無処置群 (Control群) の3群に分けた。 EA群は鍼を骨折部、 および骨折部より近位15mmの脛骨骨膜まで刺入し、 骨折部を陰極、 他方を陽極とした間欠的直流鍼通電刺激 (刺激条件:刺激幅5ms、 50Hz、 20μA、 20分間) を骨折作成日の翌日から3週間連日行った。 Sham群はEA群と同一部位・同一深度まで鍼の刺入のみ行い、 電気刺激は行わなかった。 Control群はモデル作成後、 処置を行わなかった。 評価は、 モデル作成後1、 3、 4、 6週に軟X線画像を用いて仮骨・骨面積の定量を行った。 併せて、 モデル作成後6週には脛骨を摘出し、 仮骨部の前後径、 左右径の計測を行った後、 3点曲げ試験を行い、 破断点試験力を測定した。
【結果】EA群ではSham群・Control群と比較して早期に仮骨形成が見られた (モデル作成後3週の仮骨・骨面積の比較;p<0.05)。 経過とともに全ての群で仮骨量の増大を認めたが、 モデル作成後6週経過時において、 EA群では他の実験群と比較して、 仮骨量の有意な増大を認めた (仮骨・骨面積;p<0.05、 仮骨部の前後径、 および左右径;各々p<0.01、 p<0.05)。 さらに、 EA群では、 モデル作成後6週において、 力学的にも高い仮骨強度を示した (p<0.001)。 全ての評価においてSham群とControl群の間には有意差を認めなかった。
【考察・結語】EA群で良好な結果が得られた理由として、 直流鍼通電刺激が陰極周囲、 骨折部局所の環境変化を引き起こし、 細胞活性に有利に働いた可能性が考えられ、 それにより仮骨形成の促進・増大を引き起こしたことが示唆された。 さらには、 仮骨の石灰化を促進・誘導した可能性が考えられた。

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© 2009 社団法人 全日本鍼灸学会
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