全日本鍼灸学会雑誌
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報告
鍼実技実習における感染対策教育の現状
全国のはり師・きゅう師養成学校を対象とした実態調査
菅原 正秋小林 寛伊大久保 憲坂井 友実
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2011 年 61 巻 3 号 p. 226-237

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抄録

【目的】全国のはり師・きゅう師養成学校 (鍼灸学校) の鍼実技実習における感染対策教育の現状を把握し、 教育上の問題点を明確にする目的で、 鍼灸学校に対してアンケートを実施した。
【方法】2008年12月~2009年3月に全国の鍼灸学校に調査用紙を郵送し、 回答を求めた。 質問項目は、 実習時の手指衛生 (手洗い) の方法、 実習で使用している鍼の種類、 鍼の取扱い方法の質問などから構成され、 回答は選択形式とした。
【結果】回収率は69.9%であった (107/153施設)。 手指衛生の方法について調査したところ、 「石けんと流水による洗浄と擦式消毒用アルコール製剤によるラビング法」 が65%と最も多かった。 また、 流水による手洗い後、 手を拭く (乾かす) 方法は、 「ペーパータオル」 が63%、 「エアータオル」 が21%であった。 実習で使用している鍼の種類について調査したところ、 「単回使用毫鍼のみ使用している」 が58%、 「単回使用毫鍼と再使用可能な毫鍼を併用して使用している」 が40%、 「再使用可能な毫鍼のみ使用している」 が2%であった。 しかし、 単回使用毫鍼を使用していても、 本来の使用目的どおり、 単回使用を指導している割合は25%であった。 また、 施術する際、 鍼を直接手指で触れないために指サックやゴム手袋等を使用しているかを調査した。 「常に使用するように指導している」 が17%、 「使用するかどうかは各教員に任せている」 が35%、 「使用するようには指導していない」 が48%であった。
【考察および結語】以上の結果から、 単回使用毫鍼の適正な使用法が指導されていない場合があること、 指サックやゴム手袋等の補助用具を用いた刺鍼法の実施率が低いなどの問題点が明らかとなった。 施術時の感染対策の重要性はガイドラインで示されていても、 適切な感染対策教育が実践されていない場合があり、 今後は教育の標準化をいかにして推し進めるかが課題となると考えられた。

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