全日本鍼灸学会雑誌
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短報
三重大学医学部附属病院麻酔科統合医療・鍼灸外来における安全対策への取組み
鍼灸外来診療マニュアル作成により減少した鍼関連のインシデントおよびアクシデント
向井 雄高鈴木 聡水野 海騰藤枝 久世野瀬 由圭里佐々木 和郎丸山 一男
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2012 年 62 巻 2 号 p. 168-174

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抄録

 【目的】平成22年4月より三重大学医学部附属病院 (以下、 三重大病院) 麻酔科において、 統合医療・鍼灸外来 (以下、 鍼灸外来) を開設した。 開設以降4月から11月の7カ月間で計8件のインシデント・アクシデントが発生した。 報告されたインシデント・アクシデントから問題点を再検討し、 鍼灸外来の安全性を向上させる対策として鍼灸外来診療マニュアル (以下、 マニュアル) を作成した。 マニュアル作成までの方法と実施以降のインシデント・アクシデント状況について報告する。
【方法】平成22年11月1日の段階までに報告された内容を電子カルテシステムより収集し、 それをもとに再発防止のためのマニュアルを作成し、 三重大病院安全管理部へ承認申請を行い、 審査と査察を受けた。 マニュアル導入後のインシデント・アクシデント状況を、 電子カルテを用いて平成22年12月1日から平成23年3月31日までの4カ月間調査した。
【結果】発生したインシデント・アクシデントはすべて鍼が関連する事象だった (落下鍼5件、 鍼の持ち帰り1件、 鍼の抜き忘れ2件)。 平成22年12月1日のマニュアル導入以降、 平成23年3月31日までの4カ月間、 インシデント・アクシデント報告はされていなかった。
【考察】マニュアル導入以降、 インシデント・アクシデントが現在まで報告されていないことから、 マニュアルに基づく診療はインシデント・アクシデント発生を予防する可能性が示唆された。 作成したマニュアルは鍼の管理に重点を置いたマニュアルであり、 全体を見れば不十分である。 新たな問題が発生した際は、 再度マニュアルを見直し、 新たに改定していく必要がある。 これらの作業には、 チームを編成して対処していく必要があるが、 三重大病院には感染症対策や医療安全の専門家が所属する安全管理部がある為、 協力を仰ぎつつ安全な診療体系をつくり上げていく予定である。
【結論】作成した安全対策マニュアルはインシデント・アクシデント発生の予防策になることが示唆された。

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