全日本鍼灸学会雑誌
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外国人向け医療情報提供センターにおける鍼灸の潜在的需要度に関する調査
中山 純一横木 宗晴李 允淑筒井 堅大久保 淳子
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2013 年 63 巻 1 号 p. 43-49

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抄録

【はじめに】現在、 日本における外国人登録者数は日本の総人口の 1.7%に達し (2010年末)、 近年その定住化も進んでいる。 この 「内なる国際化」 が着実に進展している中、 プライマリケアの一翼を担うべき鍼灸医療の側は、 国内の外国人の鍼灸に対するニーズや利用実態を把握できていない。 そこで、 在日外国人の鍼灸医療のニーズに対する理解を深め、 適切な鍼灸医療提供の実現の一助とするため、 在日外国人の鍼灸に対する潜在的需要度を明らかにすることを今回の研究の目的とした。
【方法】2010年の1年間に、 特定非営利活動法人AMDA国際医療情報センターに寄せられた全国 (海外含む) の外国人からの医療情報相談記録のうち、 鍼灸に関する相談および情報提供件数を抽出し、 在日外国人の医療情報相談における鍼灸に関する相談および情報提供件数から受療行動における鍼灸医療の潜在的需要度を分析した。
【結果】AMDA国際医療情報センターに寄せられた外国人からの医療情報相談2,172件のうち、 鍼灸に関する相談や治療院情報提供依頼は6件 (0.3%) であった。 相談者の国籍は、 歴史的に鍼灸が発展してきた東アジア出身者ではなく、 南米出身者が多かった。 相談内容は、 整形外科的症状・疾患に関して治療院を紹介してほしいというものが多く (4件、 66.7%)、 受診時の希望言語は日本語で良いという意見が過半数であった (4件、 66.7%)。
【考察】比率は低いものの、 日本で生活しながら鍼灸医療に期待するが、 それへのアクセス法を持たない外国人が日本国内に存在していることが明らかとなった。 他の診療科や相談機関を紹介された相談者の中には鍼灸が適応と思われるケースも多く、 在日外国人に鍼灸の適応や治療効果が知られていないことが低率の一因とも考えられた。 在日外国人の定住化、 高齢化が徐々に進行していることを考え合わせると、 今後情報の適切な伝達によっては鍼灸受療の可能性は高まると考えられる。

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© 2013 社団法人 全日本鍼灸学会
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