全日本鍼灸学会雑誌
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論考
「盛んならず虚ならざれば, 経を以てこれを取る」に関する研究
孫 基然
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2013 年 63 巻 1 号 p. 50-62

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抄録

【目的】「盛んならず虚ならざれば、 経を以てこれを取る」 は最も重要な治療原則として知れているが、 その解釈は極めて混乱し統一されていない。 そこでこれを明らかにするためその原義を検討したので報告する。
【方法】『黄帝内経』 における 「盛んならず虚ならざれば、 経を以てこれを取る」 の出典を調べ、 今日までのこれに関する研究概況及び問題点を明らかにした上で、 更にその背景を見出し、 『黄帝内経霊枢』 禁服篇にのみ引用されている 『大数』 及び 『張家山漢墓竹簡』 脈書を利用し、 「盛んならず虚ならざれば、 経を以てこれを取る」 のルーツまで遡って、 その原義の解明を行った。
【結果】その結果、 これまで計四説、 十三の意見を確認することができたが、 どれも合理的に解釈できていないことを明らかにした。
【考察】「盛んならず虚ならざれば、 経を以てこれを取る」 は 「遍身診脈法」 を背景とすることと、 『黄帝内経霊枢』 禁服篇の解釈は本篇に引用されている 『大数』 と矛盾していること、 『張家山漢墓竹簡』 脈書にある 「諍 (静) ならば則ちこれを侍たも (持) つ」 は 「盛んならず虚ならざれば、 経を以てこれを取る」 の原型であることから、 その原義は、 脈形と脈拍とが正常な場合は、 治療せず、 いつも通りで対応すると解釈すべきではないかと示唆された。

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© 2013 社団法人 全日本鍼灸学会
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