全日本鍼灸学会雑誌
Online ISSN : 1882-661X
Print ISSN : 0285-9955
ISSN-L : 0285-9955
原著
不眠に対する円皮鍼治療の効果
シャム鍼対照N-of-1試験
鍋田 智之山下 仁
著者情報
キーワード: 不眠, N-of-1 試験, Sham鍼, 円皮鍼
ジャーナル フリー

2015 年 65 巻 2 号 p. 91-98

詳細
抄録

【目的】不眠に対する鍼治療の効果を検証するため、 円皮鍼を用いた N-of-1 試験を実施した。
【研究デザイン】A:無治療 (1週間)、 B:真の治療 (Real, 3週間)、 C:偽の治療 (Sham , 3週間) の条件交換法による N-of-1 trial とした。
【セッティング】森ノ宮医療大学 (大阪市住之江区) で行った。
【参加者】1ヵ月以上の自覚的不眠を訴え、 ピッツバーグ睡眠質問票 (PSQI) で 6点以上の男女 4名。 参加者4名を ABAC または ACAB 法のいずれかにランダムに割付けた。
【介入】期間 B では神門、 内関、 三陰交に円皮鍼 0.6 mm を週 2回貼付し、 期間 C では鍼先を取り除いた偽円皮鍼を用いて同様に施術した。
【主要評価項目】睡眠日誌による睡眠時間と中途覚醒回数を記録した。 副次的な評価項目として、 ピッツバーグ睡眠質問票 (PSQI)、 日本語版気分プロフィール調査 (POMS)、 ストレスに関する Visual Analog Scale (VAS)、 および各期間中の腕時計型睡眠計 (ActiSleep) を記録した。
【主な結果】エントリーおよび研究開始時点で PSQI 8 点以上を示し、 特に入眠障害を強く訴えた 1 例について検証した。 真の治療で中途覚醒回数の減少 (Real 1.6±0.9,vs Sham 3.6±1.3) が認められた。 睡眠時間 (Real 426 min±49.3, vs Sham 450 min±60.0) に差は認められなかった。 Actisleep でも中途覚醒時間 (Real 65 min±14.7,vs Sham 129 min±39.5)、 睡眠効率 (Real 82.8%±3, vs Sham 68.6%±4.3) は真の治療でより改善を示した。 POMS の T 得点は混乱 (real 51, sham 67) で差が認められた。 しかし、 wash out が十分ではなく、 マスキングも不十分であった。
【結論】円皮鍼治療が不眠を改善するうえで有効な患者が存在する可能性が考えられた。 しかし、 今後はバイアスの問題を再検討し、 さらに質の高い研究によって再検証する必要がある。

著者関連情報
© 2015 社団法人 全日本鍼灸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top