全日本鍼灸学会雑誌
Online ISSN : 1882-661X
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原著
スポーツ選手を対象とした鍼灸治療の有害事象調査
藤本 英樹金子 泰久泉 重樹櫻庭 陽吉田 行宏鳥海 崇池宗 佐知子玉地 正則吉田 成仁近藤 宏古屋 英治
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2020 年 70 巻 1 号 p. 14-25

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抄録

【目的】本研究の目的は、 スポーツ選手に対する鍼灸治療の有害事象について調査することである。 【方法】対象となったスポーツ選手は、 合計1,804名であった。 研究の主旨に同意したスポーツ選手に対して、 質問紙もしくはWebアンケートを配布し回答を得た。 質問項目は、 ①プロフィール (年齢、 専門競技)、 ②鍼灸治療を受けた目的と実感した効果、 鍼灸治療を受けた部位、 ③鍼灸治療の有害事象、 ④鍼灸治療を受けた回数、 インフォームド・コンセントについて、 ⑤鍼灸治療による競技活動への悪影響に関する自由記述とした。 【結果】有効回答者1,525名のうち、 鍼灸治療の経験があったのは、 841名 (55.1%) であった。 経験のあった回答者の中で、 鍼治療の有害事象を経験していたのは47.6%であり、 鍼を打たれた時の痛み (17.0%) が最も多く、 次いで皮下出血 (10.1%)、 鍼を打たれ終わった後の痛み、 違和感 (10.0%) が多かった。 灸治療の有害事象を経験していたのは20.7%であり、 やけど (5.9%)、 倦怠感 (5.8%) が多かった。 自由記述では、 刺激過多による違和感、 運動時の動きにくさに関する記述が17件と最も多かった。 インフォームド・コンセントを受けたかどうかの質問項目では、 口頭で受けたが215件 (25.6%)、 紙面で受けたが34件 (4.0%)、 口頭と紙面で受けたが99件 (11.8%) であった。 【考察・結語】スポーツ選手に対する鍼灸治療において、 先行研究と同様に有害事象が生じていた。 今後、 スポーツ選手が鍼灸治療を安全に受けるための指針や鍼灸の安全性に関する教育が重要であると考えた。

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