全日本鍼灸学会雑誌
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原著
灸頭鍼から輻射される光の点火位置依存性と皮膚吸収特性
大塚 信之半田 由美子
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キーワード: 灸頭鍼, 輻射, 皮膚, 吸収, 点火位置
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2020 年 70 巻 1 号 p. 38-46

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抄録

【目的】灸頭鍼による皮膚の加熱は、 燃焼時に輻射される光の吸収量に依存するため、 皮膚各層での吸収特性を明らかにする。 【方法】艾球 (1g、 半径10mm) を鍼 (50mm、 直径0.25mm) に装着し、 K型熱電対を用いて艾球内部の温度 (上端、 中央、 下端、 側壁) と艾球の直下部の檜板上の温度および煙消失時間を測定した。 艾球最下部と檜板の距離は30、 40、 50mmとした。 点火位置は艾球の上部、 下部、 上下、 左右の4種類とした。 各5回測定し、 有意水準は5%とした。 【結果】皮膚温度に相当する艾球の直下部上昇温度の最高値は、 点火位置に有意差は無かった。 直下部および艾球下端の温度が最高値を示すそれぞれの時間は、 他の部位に比べて相関係数が0.82と最も高かった。 下端温度から求めた輻射量は左右点火時が最も高いが、 点火位置に有意差は無かった。 下部点火では、 煙消失30秒後の累積輻射量は総輻射量の77%と高く煙消失が終了の目安となった。  人の皮膚構造に基づく水の吸収特性から、 皮膚各層の輻射光の吸収量を求めた。 下端温度を500℃から700℃に上昇すると、 真皮1.3倍、 皮下組織4.1倍に吸収量が増加し、 下端温度が高いほど皮膚深部での加熱効果が期待された。 温度覚を感受する神経は表皮にも多く存在するため、 表皮の吸収特性から下部点火は緩やかな熱感となり、 左右点火は強い熱感が得られるが、 同等の高い温熱効果が期待された。 【結論】直下部上昇温度と下端温度の相関が高く、 下端温度が高いほど皮膚深部の加熱効果が期待された。 下部点火では、 煙消失が終了の目安となるとともに、 熱感は緩やかだが高い温熱効果が期待された。

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