全日本鍼灸学会雑誌
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原著
鍼灸師養成施設教員の臨床及び教育における銀鍼に対する意識調査
吉原 央恵大内 晃一橋本 厳芳野 智秋
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2020 年 70 巻 4 号 p. 300-307

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抄録
【目的】鍼灸師養成施設教員の臨床及び教育における銀鍼に対する意識調査を実施した。 【対象と方法】全国の鍼灸師養成施設 (専門学校) 87校の教員を対象に無記名式アンケート調査を郵送法により実施し、各施設につき2名の回答者を依頼した。回収データの統計解析としてFisherの直接確率検定及び単純集計を実施した。 【結果】調査票回収率は67.8%であり回答者数は118名であった。臨床で銀鍼を使用する者は35名 (29.7%) であり、そのうちディスポーザブル鍼のみを使用する者が28名 (80.0%) と最多であった。臨床での銀鍼の使用状況と治療法 (P<0.01) との間に有意な関連性が認められた。使用理由の最多は、気などの概念を用いた 「東洋医学」 によるものであった。一方、使用しない理由で最多は 「経済面」 であった。銀鍼の教育の必要性を認識している者は93名 (80.9%) であった。必要とする理由は技術向上によるものが最多であった。必要としない理由は、臨床での銀鍼の必要性が低いことによるものが最多であった。 【考察】銀鍼使用者のうち、ディスポーザブル鍼の使用者が多かったのは、銀鍼特有の衛生管理の困難さによると考えられる。銀鍼の使用理由は、「気」 など東洋医学的概念によるものが最多であることから、銀鍼の使用状況と治療法との間に関連性が認められた可能性がある。銀鍼の欠点として認識されている 「経済面」 等の要因が臨床における銀鍼の使用低下につながっていることが示唆された。一方で技術向上の為、銀鍼教育の必要性を認識している者が多かったものの反対意見もあり、銀鍼教育の実態調査が課題であると考える。 【結論】調査の結果、臨床において銀鍼を使用している者は少ないが、銀鍼教育の必要性を認識している者は多いことが明らかとなった。今後、教育現場における銀鍼教育の実態を明らかにする必要がある。
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