全日本鍼灸学会雑誌
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報告
全国障害者スポーツ大会における鍼灸マッサージによるコンディショニングルームの利用実態
櫻庭 陽石藏 正男宇都宮 信博宇都宮 光慶浦川 武之越智 富夫越智 洋黒川 淳二重松 寛人髙石 宏行高橋 正佳陳 晴儀永易 賢一郎中山 純一日浅 早人一栁 智顕前田 稔行森 康臣
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2021 年 71 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

【目的】第17回全国障害者スポーツ大会 (愛媛大会) の車いすバスケットボール、卓球、サウンドテーブルテニス、グラウンドソフトボールの会場に設置した、鍼灸マッサージによるコンディショニングルームの利用実態を報告する。 【方法】対象は、コンディショニングルームに来訪した、選手および監督・コーチである。期間は、公開練習を含めた4日間とした。対象者より、施術を希望する“部位”、来訪の“目的”と“症状”を聴取した。統計解析は、SPSS Ver.26(IBM製)を用いてχ2 検定を行い、有意水準を5%とした。 【結果】来訪者は、225名(車いすバスケットボール52名、卓球128名、サウンドテーブルテニス31名、グラウンドソフトボール14名)に及んだ。単回利用は84名(59.6%)で、複数利用は57名(40.4%)だった。施術希望部位は、肩関節が128名(56.9%)で最も多かった。来訪の目的は“体の調子が悪い(傷害)”が146名(64.9%)、“疲れを取りたい(疲労回復)”が91名(40.4%)、“身体のキレをつくりたい(パフォーマンス)”が24名(10.7%)であった。症状は“痛み”が最も多く111名(49.3%)、“疲れ・だるい”が100名(44.4%)、“凝っている”が78名(34.7%)であった。施術内容は、マッサージが200名(88.9%)と最も多く、その後、鍼は55名(24.4%)、ストレッチは53名(23.6%)と続き、灸は0名であった。鍼治療の競技別利用者は車いすバスケットボールで最も多かった(15名、28.8%)。また、鍼利用者の症状は“痛み”と“しびれ”が統計学的に有意に多かった。 【考察】多くの者がコンディショニングルームを利用し、複数回利用者も約4割に及んだこと、選手が多くの傷害を訴えていたことから、障がい者スポーツ領域におけるメディカルサポート体制が普段から十分ではないことを推測させた。また、鍼灸の利用者は少なく、10年前と変わらなかった。スポーツに鍼灸が貢献するためには、今まで以上の普及活動およびエビデンスの構築と発信を進めなければならない。

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