全日本鍼灸学会雑誌
Online ISSN : 1882-661X
Print ISSN : 0285-9955
ISSN-L : 0285-9955
最新号
全日本鍼灸学会雑誌
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
追悼
巻頭言
原著
  • 田原 伊織, 宮崎 彰吾
    原稿種別: 原著
    2021 年 71 巻 1 号 p. 4-12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
    【目的】シワは4割以上の中高年者が美容上の悩みとして抱えている。その予防・改善には、シワの溝が真皮に至る前に保湿成分を継続的に表皮内に送達し、水分の蒸散を防ぐ必要があるが、皮膚表面の角質層はバリア機能が高く、物質の透過性が極めて低い。本研究では、経皮的DDS技術の一つであるマイクロニードルから着想を得て、「小ジワ」 に対して散鍼術を行い、その直後に保湿成分を含む美容液を塗布した際の有効性、安全性について質の高いエビデンスを得ることを目的とした。 【研究デザイン】アウトカム評価者に対して割付結果を盲検化したランダム化比較試験。 【セッティング】単一施設試験。 【参加者】抗シワ製品評価ガイドラインのシワグレード(0:無い~7:著しく深い)において小ジワ(1~3)に該当し、適格基準を満たした25例。 【介入】介入群には、毎日1回、2週間、洗顔・消毒後に片側の目尻に鍼長0.3mmの円皮鍼を用いて、5回/秒程度の頻度で1分間タッピングした直後に指定の美容液を塗布するよう指示した。対照群には、鍼を抜去した円皮鍼を用いて介入群と同様のスキンケアを行うよう指示した。 【主要なアウトカム評価】主要なアウトカム評価項目はシワグレードとし、シワの評価に熟達した者が1/4値で評価した。なお、効能表現として、1未満の減少を軽減、1以上の減少を改善とした。 【主な結果】対照群では12例中3例(25%)が軽減したのに対して、介入群では13例中4例が改善、5例が軽減し、計9例(69%)で効能が認められ、リスク比は2.8(95%信頼区間:1.0~7.9、P =0.03) であった。 【結論】小ジワに対して円皮鍼で散鍼術を行い、直後に美容液を塗布するスキンケアを14日間行うと、わずかな痛みを伴うが約7割の対象者に効能が認められ、その割合は美容液を塗布するだけより約3倍であった。
  • 池上 典子, 久下 浩史, 辻 涼太, 尾﨑 朋文
    原稿種別: 原著
    2021 年 71 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
    【目的】著者らはむくみ尺度を用いて円皮鍼と圧迫施術の効果を比較した。 【方法】本研究について説明と同意を得た性別が女性、職業が学生等20名、平均年齢 39.0 歳(標準偏差: 11.2)とした。対象者は、円皮鍼施術を行う群(円皮鍼群)12名、圧迫施術をする群(圧迫群)8名とした。本研究は、森ノ宮医療大学倫理審査会承認後に行った。治療は、円皮鍼群がパイオネックス0.9㎜、圧迫群がパイオネックスゼロ0.3㎜(非侵襲式)のセイリン株式会社製を用いた。部位は、左右の陰陵泉穴(SP9)、地機穴(SP8)、三陰交穴(SP6)で行った。治療期間は、7日間(1回/2日、合計3回)行った。手順は、何も行わない7日間(Pre)、介入する7日間(Stim)、介入後何もしない7日(Post)で評価した。評価は、著者らが作成したむくみ尺度、むくみのVAS(Visual Analog Scale)、左右の内果尖上方9㎝の周径(足首周径)とした。解析は、円皮鍼群、圧迫群の経時的変化を混合モデルによる多重比較(Fisher LSD)した。円皮鍼群と圧迫群の比較は、経時的変化の間を混合モデルによる二元配置分散分析で行った。本研究の利益相反は、使用したパイオネックスについてセイリン株式会社から援助を得た。 【結果】円皮鍼群は、Pre14.5点に比べてStim9.9点でむくみ尺度が下がった。圧迫群は、Pre12.4点に比べてStim7.6点でむくみ尺度が下がった。むくみのVASは円皮鍼群の変化がなかった。圧迫群は、Pre33.7㎜に比べてPost63.7㎜で数値が上がった。むくみ尺度、VASは、円皮鍼群と圧迫群で交互作用がなかった。 【考察】円皮鍼施術と圧迫施術は、施術中に効果を示すため、継続的な貼布が必要と考えられた。 【結語】円皮鍼施術と圧迫施術の両施術は、施術中に下肢部のむくみ尺度数値を改善させた。
  • 渡邊 健, 鮎澤 聡
    原稿種別: 原著
    2021 年 71 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
    【目的】坐骨神経鍼通電療法とは、殿部あるいは下肢において鍼を経皮的に刺入して坐骨神経に電気刺激を行う方法である。一定の治療効果が報告されているが、体表の指標を目安にブラインド下に鍼を刺入するため、血管等組織損傷の可能性が常に存在する。これまでに、安全性を目的とし、かつ生体を用いた殿部における鍼刺入路の画像解剖学的検討はなされていない。本研究では、殿部の生体画像を用いて、殿部刺鍼点およびその鍼刺入路周囲部における解剖学的構造物(骨盤腔内臓器・血管・骨格筋)の解析を行い、より安全性の高い刺鍼部位について検討を行った。 【対象と方法】殿部における代表的な刺鍼点3点(a:傍仙骨部・b:梨状筋下孔部・c:坐骨結節-大転子間部)を取り上げ、各鍼刺入路周囲部をそれぞれA、B、Cゾーンとし、各ゾーンに存在する構造物について既存のCT画像(男5症例・女7症例)を用いて解析を行い、安全性について検討した。 【結果】内腸骨動脈から分枝する上殿動脈・下殿動脈の分枝パターンと走行は多様ではあるが、Aの頭側には太い上殿動脈、AおよびBには太い下殿動脈が存在することが確認された。坐骨神経内側に伴行する下殿動脈はCにも存在するが、血管径は末梢に向かうほど細くなるため、太い動脈はほとんど確認できなかった。また、AおよびBの腹側では全例で骨盤腔、約半例で腸管等臓器への接触が確認された。Cでは深部であっても臓器そのものが存在していないため、臓器損傷リスクは皆無であり、刺入路の先は筋または骨のみであった。 【結論】A・Bでは鍼先が深部・内側に向くと骨盤腔内臓器損傷の可能性がある。Aでは上殿動脈、A・B・Cでは下殿動脈への血管損傷の可能性はあるが、Cでは血管径が細いため刺鍼に伴う出血のリスクは低いと考えられる。坐骨結節-大腿骨間(C)における刺鍼が最も安全性が高いことが示唆された。
報告
  • 櫻庭 陽, 石藏 正男, 宇都宮 信博, 宇都宮 光慶, 浦川 武之, 越智 富夫, 越智 洋, 黒川 淳二, 重松 寛人, 髙石 宏行, ...
    原稿種別: 報告
    2021 年 71 巻 1 号 p. 32-39
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
    【目的】第17回全国障害者スポーツ大会 (愛媛大会) の車いすバスケットボール、卓球、サウンドテーブルテニス、グラウンドソフトボールの会場に設置した、鍼灸マッサージによるコンディショニングルームの利用実態を報告する。 【方法】対象は、コンディショニングルームに来訪した、選手および監督・コーチである。期間は、公開練習を含めた4日間とした。対象者より、施術を希望する“部位”、来訪の“目的”と“症状”を聴取した。統計解析は、SPSS Ver.26(IBM製)を用いてχ2 検定を行い、有意水準を5%とした。 【結果】来訪者は、225名(車いすバスケットボール52名、卓球128名、サウンドテーブルテニス31名、グラウンドソフトボール14名)に及んだ。単回利用は84名(59.6%)で、複数利用は57名(40.4%)だった。施術希望部位は、肩関節が128名(56.9%)で最も多かった。来訪の目的は“体の調子が悪い(傷害)”が146名(64.9%)、“疲れを取りたい(疲労回復)”が91名(40.4%)、“身体のキレをつくりたい(パフォーマンス)”が24名(10.7%)であった。症状は“痛み”が最も多く111名(49.3%)、“疲れ・だるい”が100名(44.4%)、“凝っている”が78名(34.7%)であった。施術内容は、マッサージが200名(88.9%)と最も多く、その後、鍼は55名(24.4%)、ストレッチは53名(23.6%)と続き、灸は0名であった。鍼治療の競技別利用者は車いすバスケットボールで最も多かった(15名、28.8%)。また、鍼利用者の症状は“痛み”と“しびれ”が統計学的に有意に多かった。 【考察】多くの者がコンディショニングルームを利用し、複数回利用者も約4割に及んだこと、選手が多くの傷害を訴えていたことから、障がい者スポーツ領域におけるメディカルサポート体制が普段から十分ではないことを推測させた。また、鍼灸の利用者は少なく、10年前と変わらなかった。スポーツに鍼灸が貢献するためには、今まで以上の普及活動およびエビデンスの構築と発信を進めなければならない。
短報
  • 宮崎 彰吾
    原稿種別: 短報
    2021 年 71 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
    【目的】「あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、柔道整復業」 へのCOVID-19の短期的影響について報告する。 【方法】2015年第1四半期(1~3月平均)から2020年第2四半期(4~6月平均)までの1世帯(二人以上の世帯)当たりの「あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、柔道整復業への支出金額」を家計調査から得て、COVID-19の蔓延による緊急事態措置の実施期間を含む2020年第2四半期について、前期、前年同期と比較した。また、同じ療術業ではあるが休業要請対象となった「法的な資格制度がない、その他の療術業(整体、カイロプラクティック、リフレクソロジー、骨盤矯正、など)への支出金額」を比較対照とした。 【結果】2020年第2四半期において、「あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、柔道整復業」への1世帯当たりの平均支出金額は前期より9%、前年同期より13%減少した。一方、「法的な資格制度がない、その他の療術業」への1世帯当たりの平均支出金額は前期より46%、前年同期より41%減少した。 【結論】「あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう、柔道整復業」へのCOVID-19の短期的影響として、前年同期より売上高が13%減少したと考えられる一方、「法的な資格制度がない、その他の療術業」よりも減少幅が小さく抑えられたことから、需要の底堅さをうかがい知ることになった。
症例報告
  • 石松 菜摘, 鮎澤 聡, 櫻庭 陽, 成島 朋美
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 71 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
    【はじめに】骨盤骨折後に便漏れ(切迫性便失禁)と仙骨部から肛門周囲の感覚障害が残存した患者に対し、仙骨部に低周波鍼通電を行い症状の改善が得られた一症例を経験したので報告する。 【症例】60歳代、男性。主訴は便漏れと左側仙骨部から左側肛門周囲の痺れおよび感覚鈍麻。X-1年5月、交通事故により骨盤骨折を受傷し外科治療を受けるも上記症状が残存し、その後も改善を認めず。X年4月当センターに来所し、鍼治療が開始された。 【治療及び評価】左右の第2~4後仙骨孔部(次・中・下穴)および会陽穴に斜刺にて40mm程度刺入し会陰部に得気を得た後、1~3診は1Hz15分、4~7診は20分、8診以降は50Hz 間欠波で20分施行した。評価には、便失禁の程度にNumerical Rating Scale(NRS)を、便失禁に関連したQOLに日本語翻訳版Fecal Incontinence Quality of Life Scale(FIQL)を用いた。また痺れについてVisual Analogue Scale(VAS)で評価を行った。 【経過】便失禁の程度は初診時NRS8が7診時に2まで減少し、FIQLでも改善がみられた。肛門周囲の痺れは初診時VAS69mmであったが9診目で消失した。感覚鈍麻は残存した。 【考察・結語】切迫性便失禁は陰部神経障害による外肛門括約筋の障害で生じる。今回の治療では後仙骨孔部で鍼通電を行うことで仙骨神経叢後枝を刺激し、陰部神経の活動に影響を与えた可能性がある。近年便失禁に対しては外科手術によるSacral Neuromodulation Therapy(SNM療法)が行われるが、侵襲度が小さい仙骨部の低周波鍼通電療法は、便失禁に対する安全で簡便な治療法の1つとなりうる可能性が示唆された。
  • 井畑 真太朗, 山口 智, 菊池 友和, 小内 愛, 堀部 豪, 伊藤 彰紀
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 71 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
    【目的】突発性難聴(以下SSNHL)は原因不明の感音性難聴である。高齢者で眩暈を伴う重度SSNHLでは、発症2週間以内に症状が改善しないと予後不良と言われている。今回、耳鼻科で予後不良と診断され発症約1ヶ月後より鍼治療を開始し聴力回復が認められた症例を経験したので報告する。 【症例】74歳女性、主訴:左難聴、既往歴:18年前右聴神経腫瘍の手術により右重度難聴、現病歴:X年10月4日から特に誘因なく左難聴を自覚、両側難聴になり、対話不能。同日耳鼻科を受診、左SSNHLと診断。鼓室内ステロイド注射を施行。X年10月13日より回転性眩暈出現、左SSNHLも改善せず、X年10月21日より当院神経耳科にて入院。重度感音難聴(grade4)を認め、同日から薬物療法、星状神経節ブロックを連日開始。X年10月30日、経過不良、また頸肩部の張り感を自覚した為、神経耳科より鍼治療の診療依頼。神経学的所見は左右難聴を認める以外は全て正常。板状筋、肩甲挙筋、僧帽筋に筋緊張。鍼治療方針は内耳の血流改善、頸肩部筋群緊張緩和を目的に天柱、風池、肩井及び左翳風に40mm16号鍼置鍼10分を入院中週3回、退院後週2回実施。評価はオージオグラムで測定。 【結果】初診時左91.3dB、右96.3dBの為、筆談で医療面接。1週間後左82.5dB右92.5dBと回復が認められ対話が可能となり、4ヶ月後の鍼治療終診時左68.8dB右86.3dBと回復した。聴力回復判定では回復(10-30dB未満改善)の値、重症度分類ではgrade4→grade3に回復した。 【考察および結語】本症例は、頸肩部の鍼治療で、内耳動脈を介して蝸牛の血流及び有毛細胞に何らかの影響を及ぼしたものと考える。以上より、今後、予後不良の重度SSNHL患者に対して西洋医学的治療に追加する治療オプションとして鍼治療は有用性が高い可能性が示唆された。
国際学術交流
  • 深澤 洋滋, 石崎 直人, 鶴 浩幸, 斉藤 宗則, 増山 祥子, 若山 育郎
    原稿種別: 国際学術交流
    2021 年 71 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
    オランダで開催予定であった2020年の世界鍼灸学会連合会(WFAS)年次大会は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大のため中止となり、11月28日、29日に中国・海南省海口市においてその代替大会が開催された。今回の大会の最大の特徴は、on-siteとonlineでのハイブリッド形式での初めての開催にある。28日の夕方に開かれた執行理事会では、59名もの執行理事が顔をそろえ報告や審議が行われた。前回のトルコでの執行理事会においてJSAMが提案し承認された、WFAS倫理綱領へのヘルシンキ宣言の追加について1年あまり進展がないため、再度の提案を行った。本稿では、執行理事会における報告および審議事項に関する概要の報告と、同日に開催された標準化委員会での診療ガイドライン策定に関連する講演の内容を紹介する。
書評
feedback
Top