全日本鍼灸学会雑誌
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原著
鍼刺激感覚が片脚立位時の重心動揺に及ぼす影響
-ランダム化クロスオーバー試験による検討-
村越 祐介藤本 英樹松浦 悠人Chuluunbat Oyunchimeg谷口 博志安野 富美子古賀 義久坂井 友実
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2023 年 73 巻 3 号 p. 176-185

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抄録

【目的】本研究の目的は鍼刺激感覚が片脚立位時の重心動揺に及ぼす影響を明らかにすることである。 【方法】対象は健常成人16名 (平均21.8±1.6歳) とした。 研究デザインはランダム化クロスオーバー試験を用いた。 バランス能力の評価として、 片脚立位の保持をフォースプレート上で40秒間、 各介入前後に行った。 重心動揺の項目は外周面積、 矩形面積、 実効値面積、 総軌跡長、 単位軌跡長、 単位面積軌跡長の計6項目とした。 また測定時の主観的な下肢の力の入れやすさはVisual analog scale (以下、 VAS) を用いて評価した。 鍼刺激条件では測定脚の下肢筋群に単刺術を行い、 その際の刺激感覚のVASを刺激時と測定終了時に評価した。 鍼刺激はステンレス製の鍼 (長さ50mm、 直径0.20mm) を用いた。 刺激部位は被験脚の伏兎穴 (ST32)、 殷門穴 (BL37)、 上巨虚穴 (ST37)、 承山穴 (BL57)、 光明穴 (GB37) に目的の深さまで刺入しひびきを感じた時点で抜鍼した。 コントロール条件は5分間の仰臥位とした。 統計は鍼刺激条件の鍼刺激前後およびコントロール条件の安静前後の重心動揺の各測定項目と下肢の力の入れやすさVASの比較、 鍼刺激条件の鍼刺激時と測定終了時の鍼刺激感覚VASの比較を算出した。 【結果】重心動揺の各項目に有意差はみられなかった。 しかし、 下肢の力の入れやすさのVASでは介入前後で78.0±14.9mmから63.1±17.0mmとなり有意に低値を示した (p<0.05)。 一方、 コントロール条件では有意差は認められなかった。 鍼刺激感覚のVASは刺激時で50.4±14.3mm、 測定終了時に9.8±9.0mmで有意に低値を示した (p<0.05)。 【考察および結語】下肢筋群への鍼刺激感覚は鍼刺激前後のバランス能力に影響を与えなかったが、 鍼刺激により一過性に力が入りにくい感覚が出現する可能性が示唆された。

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