全日本鍼灸学会雑誌
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その他(論考)
『黄帝内経素問』 にある臓腑と経脈の関係性の成立に関する一考察
古屋 英治
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キーワード: 黄帝内経, 臓腑, 三陰三陽, 経脈
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2023 年 73 巻 3 号 p. 192-197

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抄録

【目的】現代の鍼灸医学教育の基礎のひとつになっている臓腑経脈は 『霊枢』 「経脈篇」 で登場した。 しかし紀元前の古代中国では臓腑と経脈はそれぞれ独立して発達した経緯がある。  本研究では臓腑と経脈の関係性を成立させ、 両者が結合して臓腑の名を冠した経脈となる過程を紀元前の 『素問』 の記載内容から調査した。 【方法】底本は 『重広補注黄帝内経素問』、 紀元前の篇は丸山昌朗著 『鍼灸医学と古典の研究』 (創元社) に準拠した。 調査項目は臓と腑の名称、 臓と腑の関係、 臓腑と手足三陰三陽の表裏関係とした。 【結果】臓の名称は肝・心・脾・肺・腎、 腑の名称は小腸・膀胱・胆・大腸・胃・三焦があった。 臓と腑の関係は肺と大腸、 脾と胃、 心と小腸、 腎と膀胱、 肝と胆、 久 (病) と三焦があった。 臓腑と手足三陰三陽の表裏関係として足太陽は少陰と表裏を為すとあり、 同様に足少陽は厥陰、 足陽明は太陰、 手太陽は少陰、 手陽明は太陰、 手少陽は心主であった。 治を主る関係から肝は足厥陰少陽、 心は手少陰太陽、 脾は足太陰陽明、 肺は手太陰陽明、 腎は足少陰太陽があった。 手足と陰陽の表裏関係で臓と腑を結合させて、 これらを一括りとした表現とした太陰陽明表裏為脾胃脈也があった。 また完全な形ではないが少陰者腎也と陽明者胃脈也があった。 【考察】臓腑と経脈を結合させた臓腑経脈は脾胃から始まっていた。 他方、 完全な形ではないが他の臓腑と経脈においても結合した表現があった。 当時の医学が陰陽論と五行説で整理統合される中で、 臓腑と経脈の関係性を成立させ、 両者を結合させた新たな医学体系へと発達する過程がこの時代に存在したと推察する。 【結語】紀元前の素問において臓腑と経脈の関係性は成立し、 結合した表現は太陰陽明表裏為脾胃脈也から始まった。

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