1983 年 32 巻 4 号 p. 280-287
耳鳴りの原因は, 局所および全身疾患が考えられ, その治療方法も種々試みられているが, 慢性のものほど難治とされている。
耳鳴り患者103例に鍼治療を行なった成績は, 著効・有効あわせて24.2%, やや有効26.2%, 無効49.5%であった。
難聴の有無, 血圧の異常は治療効果に影響を及ぼさなかった。治療回数と鍼治療効果の関係は, 1クールを治療1~10回とした場合, 1クール継続治療で耳鳴りに対する鍼治療のめやすがつくことがわかった。
また, 鍼治療の直後に効果が認められ, 特に頚・肩のこりや他の不定愁訴を持つ患者群に対しては, 古来よりの耳周囲の常用穴の治療とともに不定愁訴の改善をはかり, 全身調整のための治療を併療・継続することが有効であった。