全日本鍼灸学会雑誌
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冷え症の鍼灸療法 (NO. 1)
特に足のひえについて
川名 律子
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1988 年 38 巻 3 号 p. 249-258

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抄録

〈目的〉足腰の冷えを訴える患者は, 日常よく体験する。当センターに来療した足の冷えを訴える患者92症例のうち, 生理異常, 更年期症状を併せ持つ, 3症例について例示し, 鍼灸治療の実際とその効果について報告する。
〈方法〉例示症例は, 足の冷えをもつ年齢21~49歳の女性3症例である。治療方法は, 東洋医学の特色を生かして, 全身愁訴の一分症としてとらえ, ツボ処方は, 病巣および遠隔部位 (機能解剖の視点より経絡, 経穴を選定) とし, 普通鍼およびパルス併用の鍼刺激を行った。治療回数は15~20回であった。評価法は, 当センターの愁訴表 (全身愁訴合計70項目) により, その変動を6段階に分類記入し, 効果を判定した。
〈結果〉(1), 例示患者3症例中, 2症例に鍼灸治療による2~4段階の改善が見られ, 生理異常, 更年期症状も64.7%の軽減あるいは消失が見られた。(2), 残りの1症例は, 足の冷えに変化はなかったが, 冷えに伴う愁訴の軽減あるいは消失も39.3%と低かった。(3), 足の冷えを訴える患者92症例中, 1段階以上の改善を示した50症例に冷えを伴う愁訴の軽減率も高い傾向が認められた。(4), 当センター来療患者2000症例のうち足の冷えは5.2%を占め, その50.7%に鍼灸治療の効果を認めた。
〈結論〉このことから一連の東洋医学療法は「足の冷え」という一分症にとらわれず, 全体像を対象とすることの必要性が確認できた。

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