銀イオンにより誘起された骨格筋収縮の分子機序に関する研究

抄録

銀イオン (Ag) の骨格筋への生理作用を知る為, Agによる収縮に対する外液Ca²⁺・Caチャネル阻害剤・SH基酸化還元剤の効果を調べた。Ca²⁺存在下, Agは一過性の収縮 (P₁) と持続性の収縮 (P₂) を発生した。Ca²⁺非存在時P₁のみ観察された。P₁はニフェジピンで, P₂はニフェジピンとCd²⁺で抑制された。収縮発生途中のDTT投与は収縮を中断した。0.1%H₂O₂処置筋へのAg投与は張力を生じなかった。H₂O₂処置後, 10mM DTTで2分間処置すると, 筋は再びAgに対する収縮性を回復した。20μM Hg²⁺処理筋に10μM Agを投与しても, 収縮はみられなかった。以上の結果は次の事を示している。(1) Agが骨格筋に対し2つの作用部位を持ち, 異タイプの筋収縮を誘起する。(2) 収縮の発現はSHの酸化による。(3) この反応にCaチャネルが関与している。