抄録
ウレタン麻酔ラットの尾部へ熱刺激を与えたときの開口反射に対する抑制効果を, 単一被験体実験計画法 (SSD) の条件反転法によって調べた。その結果の解析には, 移動平均法を用いて作成したグラフにもとづく視覚的精査と簡便な時系列解析法であるC統計量を用いた。歯肉の電気刺激 (1.5x閾値強度, 0.2Hz) で得られる顎二腹筋の反射性誘発筋電図は, 安定した潜時と2相性の波形を示した。54℃の熱刺激 (30s, 2回) によって顕著な開口反射の振幅の抑制効果が視覚的精査で認められた。また, その熱刺激前と刺激中の12個のデータから算出したC統計量においても有意な傾きが得られた (p<0.05)。一方, ベースライン期および32℃の熱刺激 (2回) では有意な傾きは得られず, それらの結果は視覚的精査の結果と一致した。以上の結果は, 侵害的な熱刺激によって内因性の痛覚抑制系が賦活され, その結果として鎮痛効果をもたらすこと示している。この結果は, 鍼刺激や灸刺激によって得られる鎮痛効果と共通した作用機序によるものと考えられた。また今回用いたSSDによって得られた時系列データに対して, 視覚的精査とC統計量を用いた評価が一致したことは, SSDにおけるC統計量の適用の妥当性を示すものと考えられた。