1997 年 47 巻 4 号 p. 292-298
伝統医学としての日本鍼灸を位置づけ、さらには現代日本における多様な病に対処していく上で古流派の研究は欠かせないものである。室町期以後、徐々に日本的な展開がなされ、日本の風土や民族性にあわせたものが開花していくこととなった。その中でも日本が世界にアピールできるものとして夢分流の腹診や腹部打鍼術などがある。そこで今回、腹診および腹部刺鍼を中心に各種古流派の見解を調査するとともに、多くのものに共通して重視される観点をさぐった。その結果、腹診の診断的意義として人体における上下左右の気血の偏在を察知するに適したものであり、腹部刺鍼においても膀を中心として上下左右の調和をはかるよう工夫が必要であることが明らかとなった。