全日本鍼灸学会雑誌
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「押し手」の意義と安全性を検討するための覚書
形井 秀一
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2003 年 53 巻 4 号 p. 471-483

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抄録

日本式の鍼灸においては、「押し手」を用いた施鍼が一般的である。しかも、消毒後ではあるが、素手の押し手が行われる事が多い。日本の鍼灸師が日々の臨床の中で日常的に、しかもごく通常の方法として行っている押し手の方法は、世界的な鍼の安全の基準や、医療上の安全性の考え方との隔たりがあり、安全面や衛生面からも、世界から批判を浴びる可能性が高い点である。そして、早晩、口本鍼灸界として、押し手の問題にどのような見解を持つのかを明らかにしなければならない時期が来る事が予測される。
その論議の際の材料として、押し手の歴史、諸外国と日本の現状、これまでの検討論文等についてまとめた。
衛生上の安全面から考えると、押し手の際に、指サックやグローブ、特殊な鍼管やさや等を用いる方法があるが、それらを用いないで、衛生面を考慮した方法としては、清潔野を確保した上で、ヒビスコールなど速乾性の消毒液を使用する方法が選ばれる。だが、コーティングと消毒機能を兼ね備えた新たな素材で押し手の表面を覆う方法も考えられるのではなかろうか。

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