全日本鍼灸学会雑誌
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鍼の適応症を見つける
井上 悦子于 思清水 尚道伊藤 薫校條 由紀李 強田中 充池田 和久七堂 利幸川喜田 健司
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2004 年 54 巻 1 号 p. 72-86

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抄録

鍼適応症をみつけるために、鍼灸臨床家でEBM (evidence-based medicine) 初心者のEBM実践例を提示し、鍼灸臨床家の視点からその問題点と解決策を提起した。腰痛、肩部疾患、脳卒中の文献を検索し、批判的吟味を行った。またCochraneLibraryの鍼灸レビューを紹介し、和文献RCT (randomized controlled trial) ・CCT (controlled clinical trlal) の質の評価を行った。EBMの観点から自分の臨床報告の自己評価を行った。
その結果、腰痛、肩部疾患の鍼灸エビデンスは比較的肯定的な結果をみることができたが、脳卒中後遺症への鍼灸エビデンスは質の高い研究ほど否定的結果となっていた。Cochrane Library (2003.1) のレビューでは、鍼灸治療の効果を評価しているものはまだ特発性頭痛のみであり、全体的に厳しい評価がなされていた。我が国では、1960年代にすでにRCTが行われ、1970年代には質の高い臨床研究が行われていたが、その後低迷し、1990年代後半には質の高いRCTが報告されるようになってきた。
全体として評価スコアの問題点、現実の臨床と臨床試験の実験デザインとのギャップや臨床現場でのマスク化の困難が指摘された。エビデンスを集積していくために今後は臨床家がEBMの手法を身につけ、臨床の疑問を提起し、積極的に研究者に関わっていくことが望まれる。

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