抄録
外傷後に一過性のWenckebach型房室ブロックを呈した抗てんかん薬内服中の患者の麻酔を経験した. 患者の心電図は, 手術前にWenckebach型からI度房室ブロックに変化したが, これらの房室ブロックは外傷による自律神経緊張異常に伴い生じたものと考えられた. 麻酔はセボフルランとフェンタニルによる全身麻酔で行い, 問題なく管理できた. 自律神経緊張異常に伴う房室ブロックは比較的良性のものが多く, 本症例でもアトロピンが有効であった. 抗てんかん薬内服中の患者では, 房室ブロックを生じる素因があることを念頭におき術前評価をすべきであり, 本症例のように外傷などの外因によっても誘発される可能性がある.