日本臨床麻酔学会誌
Online ISSN : 1349-9149
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ISSN-L : 0285-4945
24 巻, 9 号
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総説
  • 新井 達潤
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 395-406
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    科学的観点に立った心肺蘇生法(CPR)の開発は1900年代に入ってから始まり, 現在実施されている心肺蘇生法の基本骨格は1960年頃には完成した. 米国心臓協会(AHA)はこれらを総合し, 1974年に最初の心肺蘇生法ガイドラインを出版した. その後絶えず改善を重ね, 2000年には第5版(G2000)を出版した. G2000は蘇生に関する世界的協議会ILCOR(International Liaison Committee On Resuscitation)との緊密な連携のもとに作られたもので, 蘇生における世界的ガイドラインと考えて矛盾はない. AHAのガイドラインはヒトでの有効性が科学的に証明されたもののみを採用し, とくにG2000はEvidence-based medicineの立場を強調している. しかし, 必ずしも科学的には証明できないまま経験的有効性から採り入れられている部分もあり, また, 一般市民をも対象とするため妥協せざるを得ない部分もみられる. 本稿では現在のG2000を基準とした心肺蘇生法が, どのような考えのもとに作られ発展してきたか, また, どのような問題点を含んでいるのか, とくに作用機序の面から考察する.
原著論文
  • 岡崎 賢治, 河本 昌志, 弓削 孟文
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 407-411
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    手術室への入室形態が麻酔前患者の身体に与える影響を検討するため, 手術室への入室方法を独歩群, 車椅子群, ストレッチャー群の3群に分けて, 病棟出棟時と手術室入室時の平均血圧, 脈拍数を比較検討した. また患者・医療職員の満足度をアンケート調査した. 平均血圧は病棟出棟時に比べ手術室入室時では3群とも有意に上昇した. 脈拍数は車椅子群, 独歩群で有意に増加し, その増加の程度は独歩群がほかの2群より大きかった. 当施設は病棟と手術室が約200m離れており, 独歩での入室は身体的負担になっていると考えられた. 患者や医療職員のアンケート調査では独歩入室は好評だったが, 車椅子による入室方法も独歩入室と遜色ないことから, 車椅子による入室をおもに採用することにした.
症例報告
  • 辻本 芳孝, 福田 功, 吉良 麻利茂, 松岡 信広, 内橋 慶隆, 風間 富栄
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 412-415
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    膵体部腫瘍に対し, 膵体尾部切除術が予定された症例で, 開腹時の所見にて門脈, 肝動脈, その他周囲組織への浸潤を認め, Appleby術式を施行した. 術中, 突然, 肝静脈血酸素飽和度(ShvO2)の低下を認めたため, 術野を再検索したところ, 総肝動脈と思われて切離した動脈は固有肝動脈であったことが判明した. 急遽固有肝動脈再建術を行い, 肝血流が回復した. 本症例では門脈にも腫瘍が浸潤しており門脈血流が減少していたため, 肝動脈遮断により酸素供給が急激に減少しShvO2が低下したと考えられた. ShvO2は, 肝動脈再建を伴う膵体尾部切除術の成否の指標として有用であった.
  • 三部 徳恵, 中根 正樹, 埜口 千里, 横山 秀之, 村川 雅洋
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 416-419
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    外傷後に一過性のWenckebach型房室ブロックを呈した抗てんかん薬内服中の患者の麻酔を経験した. 患者の心電図は, 手術前にWenckebach型からI度房室ブロックに変化したが, これらの房室ブロックは外傷による自律神経緊張異常に伴い生じたものと考えられた. 麻酔はセボフルランとフェンタニルによる全身麻酔で行い, 問題なく管理できた. 自律神経緊張異常に伴う房室ブロックは比較的良性のものが多く, 本症例でもアトロピンが有効であった. 抗てんかん薬内服中の患者では, 房室ブロックを生じる素因があることを念頭におき術前評価をすべきであり, 本症例のように外傷などの外因によっても誘発される可能性がある.
  • 中西 いづみ, 角田 博, 山川 知之, 紀 敦成, 北村 里恵, 中村 久美
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 420-423
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    食道亜全摘, 同再建術を施行中に, 左主気管支裂傷をきたした症例を経験した. 患者は62歳, 男性(身長160cm, 体重50kg). 術前に気管支, 気管の病変は認められなかった. 全身麻酔導入後, 二腔気管支チューブを左気管支に挿管し, 左側臥位とした. 左片肺換気下で右開胸した. 手術開始約2時間後, 胸部操作終了直前に, 左主気管支近位部に気管支カフが露出していることを術者が指摘した. カフが裂孔を塞いでいたため, 術中の換気に問題はなかったものと考えられた. 気管支裂孔閉鎖術を施行し, その後仰臥位にし食道再建術を施行した. 術後経過は順調で, 術後30日目に退院した.
掲載論文関連講座
  • 貝沼 関志
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 424-431
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    肝静脈血酸素飽和度 (ShvO2) モニタリングは肝臓手術での応用をKainumaらの報告以来, 臨床的に肝腹部内臓領域での虚血をリアルタイムに測定する方法として国際的に広く用いられている. Appleby手術では, 膵体尾部切除と平行して腹腔動脈, 総肝動脈の切除が行われるため, 術後肝臓虚血および肝不全の危険がある. これを防止するために, われわれはAppleby手術の全例において麻酔科医が右肝静脈に肝静脈カテーテルを挿入し肝静脈血酸素飽和度モニタリングを行っている. ShvO2は, Appleby手術においては, リアルタイムに肝酸素需給バランスが持続的に表現されるため, 術中外科操作による肝虚血の防止だけでなく, Appleby手術を行うかどうかの術中判断においても決定的役割を果たす. 症例をさらに重ねることによりAppleby手術におけるShvO2モニタリングの有用性についてより高いレベルのエビデンスが得られることが望まれる.
—日本臨床麻酔学会第23回大会—
ワークショップ 脊硬麻—私ならこうする—
  • 増田 純一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 434-440
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    脊硬麻法は, 麻酔範囲の広がりの予測がつきにくく, 循環動態の変動が大きいことが予想される帝王切開, 高齢者麻酔時などが良い適応となる. そのほかにも脊硬麻の利点が生かせる症例は多く, 脊硬麻法の適応は広い. 本論文では, 帝王切開や分娩麻酔においての私の手法を紹介するとともに, back-eye型とopen-tip型脊硬麻針を比較し, 両者に使用上の有意差のないことについても述べた.
  • 滝口 鉄郎
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 441-447
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    著者らは, 硬膜外注入および体位変換により脊髄・馬尾神経が形態学的にどのような影響を受けるか脊髄造影およびMRIを用いて調べてきた. 硬膜外に生理食塩液を注入すると, くも膜下腔は硬膜外カテーテル先端近傍で強く圧迫された. また, 馬尾神経は側臥位および腹臥位になると, それぞれ重力方向に大きく偏位した. 側臥位で馬尾神経は中位腰椎レベルで最も大きく偏位し, 上位および下位腰椎レベルでの偏位は少ないものであった. 脊髄くも膜下麻酔 (脊麻) および硬膜外麻酔 (硬麻) 施行時には, 脊髄・馬尾神経に「動き」があることを考慮しなければならない. 今回, 脊麻および硬麻に関連する脊髄・馬尾神経の形態学的影響について考察した.
  • 高橋 麗子
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 448-454
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    脊硬麻には, 一ヵ所穿刺法と二ヵ所穿刺法がある. 一ヵ所穿刺法は, 一般に硬麻針を通して脊麻針を穿刺する. 一ヵ所穿刺法は穿刺が1回なので, 穿刺に要する時間が短く, 穿刺の痛みが小さく, 患者の満足度が高い. しかし, 脊麻の失敗率が高いとの報告がみられる. また, 硬膜外カテーテルのくも膜下腔への迷入や, 硬膜外腔へ投与した薬液がくも膜下腔へ過剰に移行する可能性も考慮する必要がある. 二ヵ所穿刺法は, 脊麻の効果が確実である. また, 手術創に一致した場所にどこでも硬膜外カテーテルを留置することができるので, 術後鎮痛に硬膜外を有効に使用できる. しかし, 2回穿刺による痛み, 出血, 感染などが問題となる. 一ヵ所穿刺法と二ヵ所穿刺法の各々の特徴と合併症を把握して, 手術の種類や術後痛の程度を考慮し, 両者の選択を行うことが望ましい.
  • 村中 健二, 角本 眞一, 宮脇 宏, 瀬尾 勝弘
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 455-458
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔 (脊硬麻) で使用する脊硬麻針は, おもに以下の3つのタイプに分類できる : 1) needle through needle型, 2) needle through needle with back-eye型, 3) needle beside needle型. 脊硬麻針の種類により, 最大脊麻針突出長 (7~15mm) が異なる. くも膜下穿刺は, 硬麻針の方向が側方にそれた場合や, 脊麻針突出長が短いときには成功しない. また, 脊麻針突出長は硬膜外穿刺手技の影響を受ける (正中法5.5mm : 傍正中法8.0mm, 抵抗消失法空気5.4mm : 生食5ml 9.7mm). 脊硬麻を成功させるためには, 脊硬麻針の特質, および硬膜外穿刺手技による脊麻針突出長の違いを十分に理解し, 確実な硬膜外, くも膜下穿刺を行うことが重要である.
—日本臨床麻酔学会第23回大会—
麻酔科医療フロントライン—吸入麻酔・静脈麻酔—
  • 山口 重樹
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 460-470
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    血液ガス分配係数が小さく, 刺激臭が少ないセボフルランは吸入麻酔薬による導入法に適した麻酔薬である. 高濃度セボフルランによる麻酔導入法は, 静脈麻酔薬による麻酔導入法に取って代わるものではないが, 麻酔導入から維持への移行が速やかで, 循環動態が安定しており, 筋弛緩薬の作用発現を促進するなどの利点を有するため, 有用な麻酔導入方法として選択肢の一つと考えられる. そのためには, おのおのの症例に適した高濃度セボフルランによる麻酔導入の手法を選択する必要がある. 本稿では, 高濃度セボフルランによる麻酔導入のさまざまな手法をいろいろな角度から検討し, その特徴を述べた.
  • 稲垣 喜三, 渡邊 倫子, 坂本 成司, 石部 裕一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 471-478
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    気管支ファイバースコープ (FBS) 操作未経験者が, FBSを用いた経鼻挿管を行う際に適した麻酔法を見出すために, セボフルランを用いた急速導入維持 (VIMA) 法とプロポフォールの至適濃度投与 (TCI) 法を比較した. 気道管理困難症例35名を, 導入する麻酔法に従いセボフルランVIMA法群 (SVIMA群 ; n = 15), 低効果部位濃度 (2.8μg・ml -1) TCI法群 (LTCI群 ; n = 10), 高効果部位濃度 (4.0μg・ml -1) TCI法群 (HTCI群 ; n = 10) の3群に無作為に分けた. 麻酔導入時間はSVIMA群が最も短かった. HTCI群では, 麻酔導入中の呼吸抑制が高頻度に発生したが, 気管挿管後の循環動態の変動は最も小さかった. LTCI群では気管挿管前後のBIS値が60を超えた. 初回気管挿管成功率や合併症発生率は, 3群間で同様であった. 未経験者のFBSを用いた経鼻挿管では, セボフルランVIMA法が安全で確実な麻酔法であることが示唆された.
—日本臨床麻酔学会第23回大会—
パネルディスカッション—深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症の予防・治療戦略—
  • 中村 真潮
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 480-487
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症は, 特に手術後や出産後, あるいは急性内科疾患での入院中などに多く発症し不幸な転帰をとることが多い. 欧米では非常に頻度の高い疾患であり, 古くからその予防に力が注がれてきた. 近年, 本症はわが国においても決して少なくない疾患と認識され, 欧米との発生率の差などを考慮したわが国独自の予防ガイドラインが完成した. 本ガイドラインは, エビデンスの少ないなかで作成された発展途上なものであり, 今後の研究発展が期待される.
  • 高崎 眞弓
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 488-495
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    硬膜外麻酔が普及して全麻酔症例の1/3に利用されている. 腰部硬膜外麻酔は深部静脈血栓症の発症を予防する. しかし, 周術期における深部静脈血栓症や肺塞栓症の発症は増えている. これら静脈血栓塞栓症を予防するために, 下肢に弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法を利用する. さらに高リスク患者には未分画ヘパリンを使用する. 抗凝固療法と硬膜外麻酔を併用すると, 硬膜外血腫を発症することがある. 初発症状は, 背部痛または根刺激症状で, 感覚運動麻痺, 膀胱直腸障害へ発展する. MRI検査で診断して8時間以内に脊髄の除圧を行うと神経機能の回復はよい. 硬膜外血腫は15万回の硬膜外穿刺に1回程度と考えられているが, ヘパリンを使うと発症は増える. 対応策として次のようなことがあげられる. 硬膜外穿刺後1時間以内はヘパリンを使わないこと, 術後鎮痛には麻痺の少ない鎮痛法を用いて発見を容易にすること, カテーテル抜去の前2~4時間はヘパリンの投与を止めること, 抜去後も神経学的観察を怠らないことである. 低分子量ヘパリンには静脈血栓塞栓症への適応はない.
  • 木下 佳子
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 496-502
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    深部静脈血栓症 (DVT) 予防における看護師の役割は, 患者への説明, 予防措置の実施, DVTおよび肺血栓塞栓症の早期発見と対応等である. 当院においての予防の取り組みは, 集中治療室で始まった. 集中治療室入室患者は, 予防措置が必要なリスク患者が72% (N = 109) を占めた. そこで, 予防措置の禁忌患者以外すべての患者に間欠的空気圧迫法を中心とした予防措置を実施した. その後, 病院全体の問題として, 予防マニュアルを作成した. 今後の課題は, DVT予防の重要性認識のための教育, 予防措置にかかわる未解決問題を解明する臨床研究, 予防措置にかかわる新たなリスクを見極め, 安全に予防措置を行う看護ケアの検討, 予防措置の効果測定の実施等である.
第10回日本麻酔・医事法制(リスクマネジメント)研究会
  • 高崎 眞弓
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 513-522
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    日本法医学会の異状死ガイドラインと日本外科学会のガイドラインが公表された経緯と内容, および問題点を明確にし, 現時点で麻酔に関連する傷害や死亡が発生したときの対応の仕方を示した. 麻酔科医として医療事故の届出や公表について知ることは大切であるが, 日常業務を安全に遂行するための方策を確立する方がより重要である.
  • 吉田 謙一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 523-530
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    異状死とは, 臨床医が診療経過中に確実に診断できなかった死であり, 公的機関に届け出て解剖等により死因を究明すべき死である. 医師法21条は, 医師は死体を検案して異状を認めたときには, 所轄警察署に届け出るべきことを規定している. 都立広尾病院の薬剤誤注射による患者の死亡に関する裁判 (1999年~) を端緒として, 医療関連死の異状死届出に関して, 日本法医学会の「診療行為に関連した予期しない死亡, およびその疑いのあるものを, 過誤の有無を問わずに届け出るべきである」とするガイドラインに対して, 臨床の諸学会から, 「過誤が強く疑われる場合には届け出るが, 医療行為の合併症などに届出義務を課すべきでない」という反対意見が出され論争が続けられてきた. 平成16年4月13日, 上記の事件に関して最高裁は診療中の医師に届出義務があるという判決を下したが, 届け出るべき対象は示されていない. また, 平成16年4月, 日本内科学会・外科学会・病理学会・法医学会は, 過誤の明らかでない医療関連死の届出と解剖等による死因究明をする第三者機関の設立に関する共同声明を発表して事実上論争が終結した. これを受けて厚生労働省は, 来年度, 医療関連死の解剖・評価を行うモデル事業を実施することになっている. 本稿では, 事例をもとに医療関連死の届出と解剖に関する意義や問題点を考えてみたい. また, この第三者機関のモデルとなる英米の死因調査行政機関を紹介したうえ, 今後の日本における第三者機関の方向性を簡単に紹介したい.
  • 原 哲也, 穐山 大治, 戸坂 真也, 趙 成三, 澄川 耕二
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 531-534
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    術野の消毒に用いた10%ポビドンヨードによる接触性皮膚炎に対する損害賠償調停申立事件を経験した. 全身麻酔下の手術のために術野を10%ポビドンヨードで消毒し, 拭き取りは行わずに手術を開始した. 終刀後, 右鼠径部に線状小発赤を発見した. 発赤部に対し治療を行うも, 瘢痕を形成し固定した. 退院後, 国と主治医を相手に右鼠径部の病変に対する損害賠償が請求され, 調停の結果, 賠償金の支払いにより和解した. 液状のポビドンヨードとの長時間接触により接触性皮膚炎をきたす可能性がある. 比較的まれな合併症であっても医事紛争に至る例もあり, 日常的な医療行為にも細心の注意が必要である.
  • 近江 禎子, 柴崎 敬乃
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 535-536
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    麻酔導入前に思いがけない患者の意識消失を経験したので報告する. 麻酔導入前に患者の意識が消失したため, 脳血管障害を疑い家族に説明後手術を中止し, 頭部CT検査を行った. しかし, 検査室移動時に酸素投与と同時に前日より切られていなかった吸入麻酔薬の気化器より流れていた吸入麻酔薬による意識消失と判明し, 頭部CT検査後患者と家族に説明し再度手術を行った. 患者に障害を残す医療過誤ではなかったが, 不注意による人的過誤で患者と家族に対する精神的苦痛を与えたことは患者や家族の信頼を失い, 医療過誤の原点と思われ報告した.
  • 石井 奏
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 537-542
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    症例は縦隔洞から発生した奇形腫で, この腫瘍からの出血は, 初期の段階では縦隔洞内に貯留し, その後徐々にその容積を増し血腫となり, この血腫が総頸動脈等を圧迫し, その一部が右肩関節領域まで広がり皮下出血となって表皮にまで現われてきた. ICU入室後は種々の診断方法と治療を行ったが, 最終的には入室後約4時間で死亡した. 剖検の結果, 縦隔洞から発生した奇形腫からの出血死と判明した. この症例では外来受診時, 診察医の患者家族に対する対応に問題があったが, 幸い, 剖検が家族より許可され病理学的診断と死因が解明されたので医療訴訟にはならなかった. 改めて剖検の重要性と必要性を痛感した.
  • 美馬 昂, 棚橋 識生
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 543-548
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    医療事故が増加の傾向にあり大きな社会問題となっている. 医療事故はしばしば医事紛争に発展するが, その傾向も以前より強くなってきている. 筆者美馬が所属する大阪府医師会医事紛争特別委員会に報告のあった紛争事例数でも, 10年前に比較して1.6倍に増加している. 施設別でみると病院での発生件数が2倍近くに増加し全体の70%以上を占めており, 訴訟となった事例数についても同様の増加傾向がみられた. 訴訟となった事例の頻度は最高裁の資料では10年間で2倍になっているが, 大阪府下での増加はやや少なかった. これは裁判外での事案処理が適切に行われたのも一つの要因と考えられる. 訴訟事例での認容率については最高裁の資料と同じ約40%であった. 紛争内容にも変化がみられ, 従来過誤とされなかった医療行為が問題とされること, また高度医療での医療機器の操作およびメンテナンスや医療従事者の共同作業の際に生じるシステムエラーによる事故などが増えてきている.
  • 橋本 崇文, 加來 洋子, 小林 加代子, 西連寺 央康, 鈴木 正敏, 渋谷 鉱
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 549-556
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    1980~2003年に全国の報道機関紙 (誌) が取り上げた麻酔・歯科麻酔事故訴訟に関する記事について調査した.
    1. 全報道件数は614件, 全訴訟例数は257例 (2.4件/例), うち歯科麻酔事故関係は, 26件/14例 (1.9件/例) であった.
    2. 記事の内訳は, 「提訴」 : 214件, 「賠償命令」 : 148件, 「和解・示談」 : 147件, 「口頭弁論」 : 56件, 「棄却」 : 39件の順であった. 賠償命令が3.1件/例で最多に報道されていた.
    3. 提訴時賠償請求額の平均は8,963万円 (409~2億1,600万円), 解決額和解・示談・賠償命令額の平均は5,334万円 (220~1億5,000万円) であった.
  • 嶋田 文彦, 野坂 修一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 557-561
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    近年ペインクリニック分野においても, 医事訴訟報告が増加している. そこで, 今回われわれはペインクリニック関係訴訟判例を検討し, 今後の対策について考察した. 対象は1975年から2000年までの判例9例とした. 経年的には, 訴訟件数および被告 (医療機関側) 敗訴が増加してきている. また内容的にも, ブロック処置の適応の制限, 合併症発症時の的確な緊急処置, 院内のみならず, 院外療養指導義務等医療機関側の責任を厳しく要求するようになっている. 日本ペインクリニック学会は先頃治療指針を作成した. さらに今後, 訴訟対策の意味からも会員の救急蘇生能力の向上, 学会認定医の臨床レベルの確保, 麻酔科医不足への社会的認知の向上等が求められる.
  • 木内 淳子, 阪上 学, 安部 剛志, 客野 宮治, 野坂 修一, 前田 正一
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 24 巻 9 号 p. 562-567
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/05/27
    ジャーナル フリー
    戦後の刑事医療訴訟で公刊物に掲載された患者および患側の誤認に関する6判例を検討した. 6症例ともに業務上過失傷害で有罪であった. 4症例では, 医師以外の医療従事者の過失が先行し, その後に医師が間違った医療行為を行った. 手術における左右の患側の確認では, 研修医であっても主治医に最も責任があるとされた. 現代の医療はチーム医療として行われているので, 複数の医療従事者が間違いを起こすことを前提に, 患者および患側の確認を行うマニュアルを作成することが重要である. 確認を行うのは, 可能なかぎり少人数にとどめ, ほかの人には法的責任が問われることがないようにするべきと考える.
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