2005 年 25 巻 5 号 p. 549-553
本態性血小板血症を合併した患者の腹部大動脈瘤人工血管置換術で, ヘパリンの抗凝固作用に抵抗を示した症例を経験した. 症例は75歳, 男性. ヘパリンを計10,000単位投与したが十分な活性凝固時間 (ACT) の延長が得られなかったため, アルガトロバンを使用して抗凝固を維持した. 本態性血小板血症では, 血小板第4因子 (PF4) の著明な増加を認めることが多く, さらにヘパリンが投与されたことにより, 多量のPF4が遊離され, PF4がヘパリンの作用を中和したと考えられる. 一方, アルガトロバンはPF4の中和作用を受けることなく抗凝固作用を発揮するので, 本態性血小板血症患者に対して有用な抗凝固薬といえる.