2005 年 25 巻 7 号 p. 626-636
冠動脈疾患に合併する僧帽弁逆流症は, 通常の僧帽弁逆流症と異なり, 弁組織自体の異常はなく, 弁下組織を含む左室全体の形態異常や, 壁運動の異常が複雑に重なって起こる病態である. 原因は単純な弁輪拡大だけではなく, 腱索による弁尖の引きつれ (tethering) が大きく関与しており, 弁輪形成のみですべて解決するわけではない. 治療方針については, とくに中等度の僧帽弁逆流を合併した冠動脈疾患患者に関してさまざまな意見があり, また, 新しい治療法も模索されている. 麻酔科医として, 経食道心エコーを使って逆流程度を把握することはもちろん重要であるが, それだけにとどまらず, 病態や手術法の選択肢について深く理解し, 実際の臨床に役立てたい.