2009 年 29 巻 2 号 p. 189-198
心筋虚血再灌流傷害の制御は周術期管理における重要な課題である. 心筋酸素需給バランスを考慮した全身管理に加え, 薬理学的プレコンディショニング (PPC) の活用が不可欠である. PPCの機序にはアデノシン三リン酸感受性K (KATP) チャネル, mitochondrial permeability transition pore, 活性酸素種, プロテインキナーゼ, 一酸化窒素などが関与している. 吸入麻酔薬とニコランジルはいずれもKATPチャネルを開口させ, PPCによる心筋保護効果を発揮する. 周術期においては加齢, 糖尿病, ある種の麻酔薬など, プレコンディショニング効果を減弱させる多くの因子が影響するため, 複数のKATPチャネル開口薬の併用と周術期の継続的投与により, より確実な心筋保護対策を図るべきである.