2009 年 29 巻 7 号 p. 803-808
ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド (hANP) は心房から分泌される28残基からなるペプチドホルモンであり, 腎保護作用や利尿作用をはじめとするさまざまな生物学的作用をもつ. 周術期に通常量 (0.1μg/kg/min) で投与すると血管拡張作用による低血圧が生じやすく, 麻酔維持が困難であった. しかし, 0.01μg/kg/minという低用量でも, 体液バランスが保たれていれば麻酔中に低血圧をきたすことなく, 十分な利尿効果を得ることができ, 電解質異常も生じにくい. さらにヘモグロビン値も維持され, 輸血リスクを減少できる可能性もある. hANPは周術期における新たな理想的利尿薬としての可能性がある.