日本臨床麻酔学会誌
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日本臨床麻酔学会第28回大会 シンポジウム—小児麻酔の新たな視点—成長と発達を視野に—
学童期・思春期の子どもの麻酔
戸田 雄一郎岩崎 達雄清水 一好森田 潔
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2009 年 29 巻 7 号 p. 797-802

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抄録

  腎機能は新生児で成人の約7分の1, 肝機能は半分程度しかない. しかし生後約1年を過ぎるとほぼ成人に近い機能を備えることになる. では, 精神の発達は何歳で成人と同じになるのだろうか?精神発達の未熟な子どもたちが手術を受けなければならないと知ったとき, その不安や恐怖は安易に想像できるものではないだろう. 大きな不安を抱えたまま手術に臨むと, 術後に異常行動を起こしたり, 果ては術後の回復を遅らせたりもする可能性がある. また, 記銘障害や学習障害を受けたりする子どもも少なくない. こうした望ましくない反応を防ぐための介入には, 前投薬, 両親との同伴麻酔導入などの麻酔導入方法の検討, 術後鎮痛, などがあげられる. 前投薬が最も効果的なのは2~5歳くらいの学童期以前の小児ではあるが, 年長児に使用した報告もある. 親同伴で麻酔を導入することが子どもの不安を軽減する, との報告もあるが, ミダゾラム前投薬の方が効果的である. ただし, 同伴することは親の不安を軽減するし, これは子どもの不安軽減にもつながる. マスクか静注導入かは意見が分かれる. PCAやPCEAは小児でも安全かつ有効に使用でき, ぜひとも慣れておきたい鎮痛方法である. 子どもたちがストレスなく周術期を過ごし, ひいてはその後の健やかな成長・発達に寄与できるようわれわれも関与すべきであろう.

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© 2009 日本臨床麻酔学会
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