2009 年 29 巻 7 号 p. 880-889
医療事故は, 業務上過失致死傷事件として刑事事件の対象となる. 単純ミスとされる事件でも, 医師・看護師個人に過大な責任を負わせることがある. 医療行為そのものが刑事事件の対象となる場合はさらに問題が大きい. 大野病院事件, 杏林大学割箸事件では, 捜査に長大な時間がかかった. また, 医学的な知見と手技をめぐって検察官と弁護人の攻撃・防御が真っ向から対立した. 刑事事件となった場合の防御は, 弁護士への依頼から始まる. 事実がどうであったかと医学水準がどのあたりにあるかが防御の基本となる. 可視化されていない取調室から生み出される調書が裁判で果たす役割は大きい. 取調べへの対応は防御にとって重要な意味をもつ.