2009 年 29 巻 7 号 p. 901-904
「産科医療補償制度」の目的は, 以下の3点である. (1)分娩に関連して発症した脳性麻痺 (CP) の児・家族の経済的負担を補償すること, (2)CPの原因分析, 将来のCPの予防, (3)紛争防止, 早期解決, 産科医療の質の向上.
〈考察〉1) 補償の範囲: 除外基準があり, 補償の対象とならないCP児が多く存在する可能性が高い. 2) 契約について: 各医療機関の事務的手続きが増大. 患者・家族はすべて補償を受けられると勘違いして, さらに紛争が増加する懸念がある. 3) 保険料徴収と補償の支払時期にさらなる配慮が必要.
〈まとめ〉現在, 無過失補償制度の創設が求められている. その総論的概念には異論の余地は少ない. しかしながらその制度設計を煮詰めていくうえで, 「産科医療補償制度」を検証することは, 価値があるといえる.